この表は役割と注意を確認するためのもの投与前に電子添文と施設の採用薬を必ず確認してください
この表の使い方
薬から考え始めないでください。痛みの性質を評価し(第2章)、何が足りないのかが決まってから、この表を開きます。
オピオイドの換算比はここにありません。オピオイド換算ツール に一本化してあります。
強オピオイドの開始量は 第3章 §3 にまとめてあります。同じ数字を2か所に置くと、片方が古くなるためです。
用量を載せている薬と、載せていない薬があります
電子添文で確認できた薬だけ数値を載せています。確認できなかったものは役割と注意だけを書き、用量は書いていません。推測で数値を載せないという方針です。書かれていない薬は電子添文で確認してください
強オピオイド
| 成分 | 剤形 | 性格と注意 |
| モルヒネ | 速放・徐放・坐剤・注射 | 剤形が揃う。呼吸困難にも使える(第9章)。腎機能低下では避ける。活性代謝物がたまり傾眠・ミオクローヌス・呼吸抑制 |
| オキシコドン | 速放・徐放・注射 | 扱いやすく最初の一手にしやすい。腎機能低下では控えめに |
| ヒドロモルフォン | 速放・徐放・注射 | 徐放は1日1回。同一成分の注射があり経路変更が楽(第8章)。腎機能低下でも使いやすい |
| フェンタニル | 貼付・注射・口腔粘膜吸収 | 便秘が比較的少ない。腎機能低下でも使いやすい。貼付は立ち上がりが遅く、剥がしても効果が残る。温めると吸収が増える |
| タペンタドール | 徐放錠のみ | ノルアドレナリン再取り込み阻害を併せ持つ。消化器症状が比較的少ない。飲めなくなると続けられない |
| メサドン | 錠 | 他の強オピオイドで治療困難ながん疼痛に、切り替えて使う。NMDA受容体拮抗で神経障害性の痛みに期待。QT延長、遅発性の呼吸抑制、換算が単純比でできない。講習の受講と登録が要る(第7章 §4) |
トラマドールは弱オピオイド。上限があり、けいれん閾値を下げ、セロトニン作用のある薬との併用に注意します
突出痛だけに使う製剤
アブストラル舌下錠/イーフェンバッカル錠(フェンタニル口腔粘膜吸収製剤)
定時薬の1日量から換算できません。最小用量から一段階ずつ上げて決めます。アブストラル舌下錠は100μgから開始し、100・200・300・400・600・800μgの順に調節します
舌下錠とバッカル錠のあいだで用量を読み替えないこと。持続痛が抑えられていることが使用の前提です
非オピオイド
| 薬 | 用量 | 注意 |
| アセトアミノフェン | 1回300〜1000mg、投与間隔4〜6時間以上、1日総量4000mgが限度 | 肝障害。常用飲酒・低体重・低栄養では減らす。市販の総合感冒薬と重複しやすい |
| NSAIDs | 薬剤ごと。上限を超えない | 炎症を伴う痛み(骨転移)に強い。腎障害、消化性潰瘍、心血管イベント、血小板機能。胃粘膜保護を併せて考える |
どちらも天井効果があります。上限を超えて増やしても効果は伸びず副作用だけが増えます。オピオイド開始後も原則として続けます(第3章)
鎮痛補助薬
神経障害性の痛みに、オピオイドに足して使います。少量から、1剤ずつ、間隔をあけて。効果判定に1〜2週かかります(第7章 §2)
| 薬 | 用量 | 注意 |
| ミロガバリン | 1回5mgを1日2回で開始し、5mgずつ1週間以上あけて漸増、1回15mgを1日2回 腎機能で変わる(クレアチニンクリアランス 60以上:開始5mg×2/推奨15mg×2 30以上60未満:開始2.5mg×2/推奨7.5mg×2 30未満:開始2.5mg×1/推奨7.5mg×1) | 眠気、めまい |
| プレガバリン | 電子添文で確認。腎機能で調整 | 眠気、めまい、浮腫、体重増加。高齢者は少量から |
| デュロキセチン | 電子添文で確認 | 嘔気、食欲低下。中止時は漸減。がん疼痛そのものの効能は持たない |
| ステロイド | 用量は状況で大きく変わる。指導医と決める | 神経・脊髄の圧迫、頭蓋内圧亢進、骨転移痛、肝被膜伸展。高血糖、不眠、せん妄、易感染。いつまで使うかを決めてから始める |
| ケタミン | 専門科と組んで決める | 難治性の神経障害性疼痛。悪夢、せん妄、血圧上昇。研修医が単独で始める薬ではない |
効能・効果を確かめてから出す
鎮痛補助薬の多くはがん疼痛そのものを効能として持っていません。神経障害性疼痛としての適応で使えるのか、適応外の使用になるのかで施設の手続きが変わります
便秘の薬
便秘は必発で耐性ができません。オピオイドを始めるときに同時に出します(第6章 §1)
| 種類 | 薬 | 注意 |
| 浸透圧性 | 酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール製剤 | 酸化マグネシウムは腎機能低下で高マグネシウム血症。高齢者と腎障害では定期的に測る |
| 刺激性 | センノシド、ピコスルファート | 腹痛。頓用として重ねる使い方が向く |
| 上皮機能変容薬など | ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバット | 浸透圧性で足りないときの選択肢 |
| ナルデメジン | 1回0.2mgを1日1回 | 消化管閉塞またはその疑い、再発のおそれが高い既往には禁忌(消化管穿孔のおそれ)。下痢が出やすい。オピオイドを中止したら本剤も中止する |
閉塞を疑うときは動かさない
腹部膨満・嘔吐・排ガス停止・金属音があるときは、刺激性下剤とナルデメジンを使う前に閉塞を否定します。腸管を動かすと痛みが増し、穿孔のおそれもあります(第9章 §3)
症状別の薬
| 症状 | 薬 | 注意 |
| 嘔気 | プロクロルペラジン、メトクロプラミド、ハロペリドール、オランザピン | 錐体外路症状、せん妄。閉塞のときに消化管の動きを促す薬を選ばない。糖尿病では使えない薬がある |
| 呼吸困難 | モルヒネ(少量から)、ベンゾジアゼピン(不安が絡むとき)、ステロイド(癌性リンパ管症・上大静脈症候群・気道狭窄) | まず治療できる病態を探す。送風は薬より先に試せる。呼吸困難に対するモルヒネには頭打ちがあり、やみくもに増やさない(増やしたぶんは鎮静として出る。第9章 §2) |
| せん妄 | ハロペリドール、クエチアピン、リスペリドン、オランザピン | 原因探し → 環境調整 → 薬の順。糖尿病では使えない薬がある |
| 不眠 | ラメルテオン、スボレキサント、レンボレキサント | ベンゾジアゼピン系はせん妄を悪化させることがある |
| 消化管閉塞 | 分泌を減らす薬、ステロイド、鎮痙薬、制吐薬 | 減圧(経鼻胃管・胃瘻)と手術・ステントの適応を外科と検討する |
| 死前喘鳴 | 分泌を減らす薬 | 吸引を繰り返さない。体位変換と口腔ケア、輸液量の見直しが先(第10章 §2) |
骨転移の薬
| 薬 | 用量 | 注意 |
| デノスマブ | 120mgを4週間に1回、皮下投与 | 投与開始前に血清カルシウムを測り、低カルシウム血症があれば是正してから始める。開始後も数日から起こるため繰り返し測る。カルシウム500mg/天然型ビタミンD 400IU を毎日補う(血清補正カルシウム値が高値でない限り)。顎骨壊死があり開始前に歯科を通す |
| ゾレドロン酸 | 電子添文で確認。腎機能で調整 | 低カルシウム血症、顎骨壊死、急性期反応 |
放射線が効きます。ただし効果まで数日から数週かかり、その間の鎮痛は続けます。ラジウム-223は去勢抵抗性前立腺癌の骨転移に用いられ、適応が限られます(第7章 §3)
脊髄圧迫はその日のうちに動く
背部痛に下肢の筋力低下・排尿障害・肛門周囲の感覚低下が加わったら、画像・ステロイド・専門科への連絡。歩けるうちに始められたかで、その後歩けるかが変わります
がん悪液質の薬
| アナモレリン |
| 効能 | 非小細胞肺癌・胃癌・膵癌・大腸癌におけるがん悪液質に限られる |
| 対象 | 6か月以内に5%以上の体重減少と食欲不振が必須。加えて、疲労または倦怠感/全身の筋力低下/検査値(CRP 0.5mg/dL超、ヘモグロビン12g/dL未満、アルブミン3.2g/dL未満のいずれか)の2つ以上。栄養療法・運動療法と併せて行う |
| 用法 | 100mgを1日1回、空腹時に経口投与。服用後1時間は食事をしない |
| 効果判定 | 投与開始3週後を目途に判定し、体重増加も食欲改善も認められなければ原則中止。12週を超える投与経験はない |
| 禁忌 | 過敏症/うっ血性心不全/心筋梗塞・狭心症/高度の刺激伝導系障害/クラリスロマイシン・イトラコナゾール・ボリコナゾール・リトナビル含有製剤・コビシスタット含有製剤・エンシトレルビル・セリチニブとの併用/中等度以上の肝機能障害(Child-Pugh B・C)/消化管閉塞等による経口摂取困難 |
| 監視 | 投与開始前と投与中に心電図・脈拍・血圧・心胸比・電解質、および血糖・尿糖を定期的に測定する |
まず
治療できる食欲不振を外します。口腔カンジダ、義歯不適合、便秘、嘔気、うつ、味覚障害、薬剤。栄養評価そのものは
栄養管理ノート にあります
拮抗薬
| ナロキソン |
| 電子添文の用法 | 成人に1回0.2mgを静脈内投与。効果不十分なら2〜3分間隔で0.2mgを1〜2回追加 |
| 緩和ケアでの実務 | 希釈して少量ずつ、呼吸数を見ながら。一度に外すと抑えていた痛みが一気に戻り、離脱症状も起こる |
| 注意 | 作用時間はオピオイドより短い。いったん戻っても再び抑制されるので、投与後も監視を続け、必要なら繰り返す |
| 使わない場面 | 呼吸数が保たれ、呼びかけで覚醒するなら使わない。次の定時薬を飛ばして原因を探すほうが安全(第6章 §4) |
免責事項:本コンテンツは医療従事者の学習・参考を目的としたものであり、医療機器ではありません。記載の数値・基準・薬剤の用量はあくまで一般的な目安であり、実際の診療は各施設のプロトコルと患者の病態、および最新の添付文書に従ってください。診断・治療の最終判断は必ず担当医師が行ってください。