選ぶ軸は4つ/6成分の性格/腎機能で変わること/突出痛だけに使う製剤。
| 軸 | 見るもの | 効いてくる場面 |
|---|---|---|
| 腎機能 | eGFR、尿量、脱水 | モルヒネを避けるかどうか(§3) |
| 飲めるか | 嚥下、嘔吐、消化管閉塞、意識 | 内服か、貼付か、注射か(第8章) |
| 副作用の出方 | すでに便秘か、眠気が強いか、せん妄があるか | 成分を変えるか、量を変えるか(第6章) |
| 痛みの性質 | 神経障害性の成分があるか | 鎮痛補助薬を足すか、メサドンを考えるか(第7章) |
成分ごとの強さの比は、換算のときにだけ必要になります。数字はオピオイド換算ツールに入れてあるので、この講義では持ちません。同じ数値を2か所に置くと、片方が古くなります。
| 成分 | 剤形 | 性格 |
|---|---|---|
| モルヒネ | 速放・徐放・坐剤・注射 | いちばん古く、剤形が揃っている。呼吸困難に使える(第9章)。腎機能低下では避ける |
| オキシコドン | 速放・徐放・注射 | 扱いやすく、最初の一手にしやすい。剤形も一通り揃っている |
| ヒドロモルフォン | 速放・徐放・注射 | 徐放は1日1回。同じ成分の注射があり、内服から注射へそのままつなげられる(第8章) |
| フェンタニル | 貼付・注射・口腔粘膜吸収 | 便秘が比較的少ない。腎機能低下でも使いやすい。貼付は立ち上がりが遅い |
| タペンタドール | 徐放錠のみ | μ受容体への作用に加えノルアドレナリン再取り込み阻害を持つ。消化器症状が比較的少ない。剤形が徐放錠だけなので、飲めなくなると続けられない |
| トラマドール | 速放・徐放 | 弱オピオイド。上限がある。けいれん閾値を下げる。セロトニン作用のある薬との併用に注意 |
メサドンも強オピオイドですが、位置づけが違います。適応は他の強オピオイドで治療困難ながん疼痛で、必ず他剤から切り替えて使います。神経障害性の痛みに期待できる一方、処方には講習の受講と登録が要り、心電図の管理も必要です。第7章で扱います。
ここが選択でいちばん効く軸です。モルヒネは活性を持つ代謝物が腎から出ていきます。腎機能が落ちるとそれがたまり、傾眠、ミオクローヌス、呼吸抑制として出ます。
| 腎機能 | 選び方 |
|---|---|
| 保たれている | どれでもよい。オキシコドンかヒドロモルフォンから入ることが多い |
| 低下している | モルヒネを避ける。フェンタニルやヒドロモルフォンが使いやすい。オキシコドンは量を控えめに |
| 透析中 | フェンタニルが選ばれることが多い。専門科と相談する |
肝機能も見ますが、実務では腎機能ほど選択を変えません。高度の肝障害では、どの成分でも量を減らして間隔を空けるという共通の対応になります。
フェンタニルの口腔粘膜から吸収される製剤(舌下錠とバッカル錠)は、突出痛のためだけの薬です。効き始めが速く、切れるのも速い。定時薬としては使えません。
| ふつうのレスキュー | フェンタニル口腔粘膜吸収製剤 | |
|---|---|---|
| 量の決め方 | 定時薬1日量の1/6(第5章) | 換算しない。最小用量から段階的に決める |
| 製剤どうし | 同一成分なら比較で考えられる | 舌下錠とバッカル錠のあいだで用量を読み替えない |
| 向く場面 | ほとんどの突出痛 | 立ち上がりが速く短時間で終わる突出痛 |
オピオイド換算ツールでもこの2製剤は換算の対象から外してあります。換算表に数字が無いことが、そのまま「換算してはいけない」という意味です。
使うには、定時のオピオイドで持続痛が抑えられていることが前提です。持続痛が取れていない患者にこの製剤を重ねても、突出痛の形になっていないので効きません。まず定時薬を整えます。
何が起きていて、次に何をするかを考えてください。