評価して記録する → 定時薬とレスキューを組む → 同じ物差しで測り直すオピオイドで怖いのは量ではなく、評価せずに始めることと、始めたあと見に行かないこと
呼ばれたときの順番
最初に見るのは患者。指示簿はそのあと。診ずに強さだけ聞くと、痛み以外の苦痛を痛みとして扱ってしまいます(第1章)
| 呼ばれ方 | 最初に確認すること | 章 |
| 痛い | 患者を診る。部位・性状・いつから。NRSを測って記録。直近24時間のレスキューの回数 | 2・5 |
| 息が苦しい | 酸素飽和度と呼吸数。治療できる原因(胸水・心嚢液・肺炎・貧血・肺塞栓・気道閉塞・心不全) | 9 |
| 吐く | オピオイド開始からの日数、便が出ているか、腹部所見 | 6・9 |
| 便が出ない | 下剤が処方されているか。最終排便はいつか | 6 |
| つじつまが合わない | 薬剤・脱水・尿閉・便秘・痛み・感染・高カルシウム血症・脳転移・癌性髄膜炎 | 9 |
| 眠りすぎる | 呼吸数を数える。呼びかけで覚醒するか。腎機能は落ちていないか | 4・6 |
治療できる原因があるなら、それを治すことが最大の緩和
胸水を抜く、輸血する、尿閉に導尿する、高カルシウム血症を下げる。これらはモルヒネでは代わりになりません。症状緩和と原因治療は同時に走らせます
呼吸困難のモルヒネには頭打ちがある
天井が無いのは鎮痛の話。呼吸困難では少量で効き、そこから増やしても改善は伸びません
増やしたぶんは緩和ではなく鎮静として出ます。眠って訴えなくなったことを効いたと読み違えない
送風はすべての患者に試してよく、薬より先にできます(第9章 §2)
痛みを評価する
| 持続痛 | 突出痛 |
| 形 | 一日の大半、途切れずにある | ふだんは落ち着いているのに一過性に強くなる |
| 対応 | 定時薬で底上げ | レスキューで山を削る |
次の定時薬の直前に決まって痛むのは突出痛ではありません。定時薬の量か間隔を見直します。レスキューで埋め続けない(第2章)
神経障害性のサイン
しびれる/電気が走る/焼ける/触れただけで痛い
オピオイドの量で追いかけない。鎮痛補助薬を足す(第7章)
NRSは3つ分けて記録する
安静時/体動時/この24時間で最も強かったとき
目標は段階で。① 夜眠れる ② 安静時に痛みがない ③ 動いても痛みがない
始める
三段階ラダーは順に上る階段ではありません。強い痛みには最初から強オピオイドでよい(第3章)
| 薬 | 開始量(オピオイド未使用) |
| モルヒネ徐放錠 | 1日20mgを2回に分割 |
| オキシコドン徐放錠 | 1日10mgを2回に分割 |
| ヒドロモルフォン徐放錠 | 1日4mgを1回 |
| トラマドール | 1日100mgを4回に分割 |
アセトアミノフェンは1回300〜1000mg、間隔4〜6時間以上、1日4000mgが限度。オピオイド開始後も非オピオイドは原則続ける
4つ一組で出す
定時薬 / レスキュー / 下剤 / 嘔気時の指示
どれかが欠けた処方は、夜間にコールを呼びます
毎食後は間隔が空く
8時 → 12時 → 18時 →(14時間の空白)→ 8時。明け方の痛みはここで作られます
眠前を1回入れて間隔をならす(朝・夕・眠前)。アセトアミノフェンもロキソプロフェンも「食後」と決まってはいません
NSAIDsを眠前に回すときは空腹時を避ける工夫を併せて
調節する
レスキュー1回量 ≒ 定時薬の1日量 ÷ 6
増量幅 いまの1日量の 30〜50% 増(倍にしない)
| 前日の様子 | 次の手 |
| レスキューを何度も使い、使えば効く | 定時薬を増やす |
| レスキューを使っても効かない | 1回量を上げる。効かなければ痛みの種類を疑う |
| レスキューは少ないのに安静時のNRSが高い | 残薬を数える。飲めているか確かめる |
| 痛みは取れているのに眠い | 減らす |
増やしてはいけない4つ
① 痛みは取れているのに眠い ② 神経障害性 ③ 痛み以外の苦痛 ④ 定時薬の切れ目
眠気は副作用であって、鎮痛の目的ではありません
予測できる突出痛(体動・処置・排便)は動く前に使う。「痛くなったら飲んで」だけでは伝わりません
副作用
| 副作用 | 経過 | 対応 |
| 便秘 | 必発。耐性ができない | 最初から下剤。最終排便日を確かめる |
| 嘔気 | 1〜2週で軽くなる | 嘔気時の指示で。定時では出さない。先に便が出ているか聞く |
| 眠気 | 数日で軽くなる | 続くなら減量。ミオクローヌスが揃ったら腎機能を見る |
| せん妄 | オピオイド単独は少ない | 原因を探す。膀胱を触る |
ナルデメジンは消化管閉塞に禁忌
腹部膨満・嘔吐・排ガス停止があるときは先に閉塞を否定する。刺激性下剤も同じ
オピオイドを中止したら本剤も中止する
呼吸抑制
眠気 → 呼吸数低下 → 浅い呼吸の順。いきなり止まらない
見るのは呼吸数と覚醒の程度。酸素飽和度は当てにならない
ナロキソンは希釈して少量ずつ。一度に外すと痛みが戻り離脱症状が出る。作用時間はオピオイドより短いので監視を続ける
呼吸数が保たれているなら、次の定時薬を飛ばして原因を探すほうが安全
変える
変える理由は「飲めない・副作用・効かない」の3つ。飲めないだけなら成分は変えず経路だけ(第8章)
換算する → 2割ほど減らす → レスキューを決め直す → 見に行く
| 腎機能 | 選び方 |
| 保たれている | どれでもよい |
| 低下している | モルヒネを避ける。フェンタニル、ヒドロモルフォンが使いやすい |
貼付剤の注意
立ち上がりが遅く、剥がしても効果が残る。量が動く時期には向かない
温めると吸収が増える。発熱・電気毛布・長い入浴に注意
飲めなくなるのは急ではありません。むせる・食べられない・うとうとするの段階で、経路と在宅の準備を始めます
看取りの数日
| 見立て | 手がかり | やること |
| 月単位 | 身の回りのことはできる | 副作用を抑えて長く使える形に |
| 週単位 | 日中の半分以上を臥床。飲めない日が出る | 飲めなくなったときの経路と療養場所を決める |
| 日単位 | 意識低下、嚥下不能、四肢のまだら模様 | 薬を整理する。検査を減らす。家族に伝える |
死前喘鳴
吸引を繰り返さない。取りきれず、粘膜を傷つけ、本人を刺激します
体位を変える、口腔ケア、輸液量の見直し。つらいのは家族のことが多く、説明が最大の対応
この時期の輸液は減らすことを考える。浮腫・胸水・気道分泌を増やして苦痛の側に働くことがあります。見捨てることではないと家族に説明します
鎮静を検討する前に確かめること
治療抵抗性か / 相応性 / 意図 / 患者と家族の意思 / チームの合意 / 記録
主治医ひとりで決めない。いきなり深い鎮静から入らない
研修医が担うのは判断ではなく、取れていないことを記録して早くチームに上げること
麻薬の実務
| 決まっていること |
| 処方できる人 | 都道府県知事の免許を受けた麻薬施用者 |
| 処方箋 | 通常の記載に加えて患者の住所と麻薬施用者免許証の番号(院内処方箋では省略可) |
| 受け取れる薬局 | 麻薬小売業者の免許を持つ薬局に限られる |
| 残った薬 | 患者や家族が捨てない。処方元か調剤した薬局に返す。患者が亡くなったときも同じ |
説明まで含めて処方です。痛みを取るための薬であること、依存や中毒とは別のものであること、量は調節できることを、始める場で言葉にします
免責事項:本コンテンツは医療従事者の学習・参考を目的としたものであり、医療機器ではありません。記載の数値・基準・薬剤の用量はあくまで一般的な目安であり、実際の診療は各施設のプロトコルと患者の病態、および最新の添付文書に従ってください。診断・治療の最終判断は必ず担当医師が行ってください。