初期研修医向け 電解質・輸液講義
電解質・
輸液ノート
Na は塩ではなく水の指標。当直で迷わないための。
72歳女性。小細胞肺癌で化学療法中。数日前から食欲低下と倦怠感。本日、家人が「受け答えがぼんやりしている」と救急外来へ連れてきた。血圧 128/76、脈拍 78、浮腫なし・皮膚ツルゴール正常・腋窩は湿潤。
採血で Na 116 mEq/L。「食べていないし脱水だろう」と生理食塩水 1000 mL を投与した。
翌朝の採血、Na は 112 mEq/L ― さらに下がっていた。
| 項目 | 値 | 基準値 |
| 血清 Na | 116 → 112 ↓↓ | 136–145 |
| 血漿浸透圧 | 242 mOsm/kg ↓ | 275–290 |
| 尿浸透圧 | 520 mOsm/kg ↑↑ | — |
| 尿中 Na | 65 mEq/L ↑ | — |
| 尿酸 | 2.1 mg/dL ↓ | 3.5–7.0 |
❌ よくある間違い
低 Na = 塩が足りない → 「とりあえず生理食塩水」。食欲低下もあるし脱水だろう…
→ この患者では、生食がむしろ低 Na を悪化させます。
⚡ 尿浸透圧 520・尿Na 65・浮腫なし → SIADH
⚡ 尿が血漿より濃いため、生食の Na は尿へ捨てられ水だけが体に残る
身体所見(浮腫なし・ツルゴール正常)と尿検査を見れば、脱水ではないと分かった。低尿酸も SIADH を支持する。
低 Na は「浸透圧 → 体液量 → 尿」の順で考えれば解けます。
第1章から順に学んでいきましょう。
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学習進捗
0 / 8 章完了
第1章から始めましょう
第1部 ・ ナトリウムと水
1
体液と浸透圧の基礎体液区分・血漿浸透圧・「Na は水の指標」・浸透圧ギャップ
2
低Na血症の鑑別3ステップ・体液量評価・尿浸透圧と尿Na・SIADH
3
低Na血症の治療補正速度の上限・ODS 回避・3%食塩水・過補正への対応
4
高Na血症自由水欠乏の計算・尿崩症の鑑別・補正速度
第2部 ・ カリウム
5
低K血症4分類・尿K での鑑別・心電図・補正の実際と Mg
6
高K血症偽性の除外・心電図・3本柱の初期対応・原因検索
第3部 ・ その他の電解質と輸液
7
Ca・Mg・P の異常補正Ca・高Ca血症クリーゼ・Mg 欠乏の波及・リフィーディング
8
輸液の考え方維持と補充・製剤の中身・自由水・電解質異常時の選択
まとめ
まとめ早見表(チートシート)基準値・補正式・速度上限・輸液組成を1ページに
鑑別診断一覧Na・K・Ca・Mg・P の原因疾患を網羅した当直リファレンス
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このサイトについて
電解質異常は、当直で最も多く遭遇し、そしてとりあえずで処置されがちな問題です。低 Na に生食、高 K に樹脂 ― どれも状況によっては正しく、状況によっては有害です。このシリーズは「なぜその輸液なのか」を説明できるようになることを目標に、8章で構成しています。
各章は概ね10〜20分で読み終わります。読了ボタンを押すと進捗が保存され、次回の続きがすぐわかります。データはすべてこの端末のみに保存され、外部には送信されません。
免責事項:本コンテンツは医療従事者の学習・参考を目的としたものであり、医療機器ではありません。記載の数値・投与量はあくまで一般的な目安であり、実際の診療は各施設のプロトコルと患者の病態に従ってください。診断・治療の最終判断は必ず担当医師が行ってください。
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より理解を深める!体液電解質異常と輸液(柴垣有吾/中外医学社)
酸塩基だけで終わらせず、電解質・輸液とつなげて考える力がつく一冊。この講義で基本を押さえたら、本書でさらに理解を深められます。
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