体液はどこにあるか/浸透圧とは何か/なぜ Na は水の指標なのか。すべての章の土台。
体重の約 60% が水分です(男性 60%・女性 50% が目安。高齢者はこれより少なめ)。その内訳は覚えておくと、輸液がどこへ行くかを考えるときに役立ちます。
| 区分 | 体重比 | 主な陽イオン |
|---|---|---|
| 細胞内液(ICF) | 約 40% | K⁺(体内 K の 98% はここ) |
| 細胞外液(ECF) | 約 20% | Na⁺ |
| └ 間質液 | 約 15% | Na⁺ |
| └ 血漿 | 約 5% | Na⁺ |
| 輸液 1000 mL | 血管内に残る量(目安) |
|---|---|
| 5% ブドウ糖液 = 実質「水」 | 約 80 mL(全体液に均等に分布) |
| 生理食塩水・リンゲル液 = 細胞外液 | 約 250 mL(細胞外に留まる) |
水は濃いほうへ動きます。細胞膜は水を自由に通すので、細胞内外の浸透圧は常に等しくなるように水が動きます。臨床で使う式は2つです。
ギャップが開いていれば、式に入っていない何かが血中にあるということです。
ここがこのシリーズで最も重要な一文です。
低 Na 血症の患者は塩が足りないのではなく、多くの場合水が多すぎるのです。だから治療は、塩を足すことではなく水を減らすことが基本になります。
| 決めているもの | 評価する方法 | |
|---|---|---|
| 体液量(volume) | 体内の Na 総量 Na が多い=体液量が多い | 身体所見(浮腫・頸静脈・ツルゴール・血圧) |
| Na 濃度 | 体内の水の量 水が多い=Na 濃度は低い | 血清 Na の測定値 |
体内の水を調節しているのは ADH(抗利尿ホルモン、バソプレシン)です。ADH が出ると腎臓で水が再吸収され、尿は濃くなり、血液は薄まります(=Na 濃度が下がる)。
Na の数字を見たら、まず本当に低張なのかを確認します。ここを飛ばすと治療を誤ります。
| タイプ | 血漿浸透圧 | 正体 |
|---|---|---|
| 高張性低 Na | 高い | 高血糖・マンニトール。細胞内から水が引き出され、Na が薄まっている。水は足りていない |
| 等張性低 Na (偽性低 Na) | 正常 | 著明な高 TG 血症・高蛋白血症(多発性骨髄腫)。検査上の見かけで、実際の Na 濃度は正常 |
| 低張性低 Na | 低い | これが本物の低 Na 血症。第2章の鑑別へ進む |