初期研修医向け 心電図講義
心電図判読ノート
波形を暗記するのではなく、順番に測る。当直で、呼ぶか帰すかを決められるようになるまでの。
64歳男性。1時間前からの前胸部痛と冷汗で救急搬送。喫煙40年、高血圧あり。
心電図で II・III・aVF の ST 上昇 を確認し、下壁 STEMI と診断。研修医は「胸痛が強いので」とニトログリセリンを舌下投与した。
直後、血圧が 104/68 → 68/40 に急落し、患者は冷汗を強めた。
| 項目 | 来院時 | ニトロ投与後 |
| 血圧 | 104/68 mmHg | 68/40 ↓↓ |
| 脈拍 | 52 /分 ↓ | 50 /分 |
| II・III・aVF | ST 上昇 3 mm | 変化なし |
| I・aVL | ST 低下(対側性) | — |
| 肺野聴診 | 清明 | 清明 |
| 頸静脈 | 怒張 | 怒張 |
❌ よくある間違い
「胸痛が強い → 心筋虚血 → とりあえずニトロ」。
ST 上昇の誘導までは正しく読めていた。しかし下壁梗塞のときにだけ必要な、もう一手を踏まなかった。
→ この低血圧は、投与した薬が引き起こしたものです。
⚡ 下壁 STEMI に合併した右室梗塞
⚡ 障害された右室は前負荷に依存する。硝酸薬・利尿薬・モルヒネは前負荷を奪い、循環を破綻させる
下壁の ST 上昇を見た時点で V3R・V4R を追加していれば診断できた。徐脈52・頸静脈怒張・肺野清明という所見も揃っていた。治療は輸液で前負荷を保ちつつ、最優先で再灌流。
心電図は暗記ではなく順番に測るもの。
第1章から順に学んでいきましょう。
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学習進捗
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第1章から始めましょう
第1部 ・ 読むための土台
1
心電図の基礎記録紙の目盛り・12誘導が見る方向・基本波形と正常値・電気軸
2
系統的判読の型(5点法)Rate→Rhythm→Axis→Interval→ST-T/心拍数の求め方/QTc
第2部 ・ 不整脈
3
調律を読む洞調律の変動・PAC と PVC・R on T・どこまでが良性か
4
頻脈性不整脈まず血行動態/QRS 幅で分ける/PSVT・心房細動・粗動・VT
5
徐脈・房室ブロックWenckebach と Mobitz II の違い・完全ブロック・ペーシング適応
第3部 ・ 虚血と危険なサイン
6
虚血・梗塞の ECGST 上昇の基準・責任血管の推定・後壁/Wellens・右室梗塞
7
見逃せない危険な心電図QT 延長と TdP・Brugada・WPW・高K血症・肺塞栓
第4部 ・ 統合
8
当直での判読フロー主訴別の使い方・即座に呼ぶ所見・帰してよいかの判断
まとめ
まとめ早見表(チートシート)正常値・心拍数の求め方・責任血管・緊急所見を1ページに
鑑別アルゴリズム頻脈・徐脈・wide QRS・ST 変化を絞り込む当直リファレンス
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ツール
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Wells Score(DVT・PE)肺塞栓を疑ったときの臨床的確率評価
計算ツール
関連サイト
MedCalc Tools — medcalcs.app救急・糖尿病・整形など医療計算ツール
このシリーズについて
心電図が苦手な人の多くは、波形を「覚えるべき絵柄」として扱おうとしています。しかし心電図は絵ではなく測定値です。1マスが何秒かを知り、どの誘導がどこを見ているかを知り、毎回同じ順番で測る。それだけで、当直で必要な判断の大半は届く範囲に入ります。
このシリーズは、「診断名を当てる」ことではなく「呼ぶか、帰すか」を決められることをゴールに構成しています。各章は概ね10〜20分。読了ボタンを押すと進捗が保存され、次回の続きがすぐわかります。データはすべてこの端末のみに保存され、外部には送信されません。
免責事項:本コンテンツは医療従事者の学習・参考を目的としたものであり、医療機器ではありません。記載の数値・基準・薬剤の扱いはあくまで一般的な目安であり、実際の診療は各施設のプロトコルと患者の病態に従ってください。診断・治療の最終判断は必ず担当医師が行ってください。
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