QT 延長と torsades/Brugada/WPW と偽性 VT/高 K 血症/肺塞栓・タンポナーデ。
QT が延びるということは、心筋が回復しきっていない時間が長いということです。その間に期外収縮が入ると(R on T/第3章)、多形性心室頻拍 ―― torsades de pointes(TdP) ―― に発展しえます。
| 原因 | 具体例 |
|---|---|
| 電解質 | 低 K・低 Mg・低 Ca(3つとも QT を延ばす) |
| 薬剤 | 抗不整脈薬(I a群・III群)、抗精神病薬・抗うつ薬、マクロライド・キノロン系抗菌薬、制吐薬、抗真菌薬など 日常的に処方される薬が多い。併用で相加的に延長する |
| 徐脈 | 完全房室ブロックなど。QT は徐脈で延びる |
| 先天性 | 先天性 QT 延長症候群。若年での失神・突然死の家族歴が手がかり |
| その他 | くも膜下出血などの頭蓋内病変、低体温、心筋虚血 |
器質的心疾患がないのに、心室細動による突然死を起こしうる遺伝性不整脈です。日本を含む東アジアの中年男性に多いことが知られています。
房室結節とは別に、心房と心室をつなぐ副伝導路(Kent 束)がある状態です。興奮が副伝導路を通って心室に先回りするため、特徴的な波形になります。
| 所見 | 理由 |
|---|---|
| PR 間隔が短い(< 0.12 秒) | 房室結節を迂回して先に心室へ届くため |
| δ(デルタ)波 QRS の立ち上がりがなだらか | 心室筋を直接ゆっくり伝わる部分ができるため |
| QRS 幅が広い | δ波の分だけ QRS が前に伸びる |
WPW 自体は無症状のことも多いのですが、心房細動を合併したときに状況が一変します。
電解質・輸液ノートと直結する部分です。とくに高 K 血症は、心電図が「今どれくらい危ないか」を教えてくれる数少ない病態です。
| 電解質 | 心電図 |
|---|---|
| 高 K 血症 | ① T 波の増高・尖鋭化(テント状 T) → ② P 波の平坦化・消失、PR 延長 → ③ QRS 幅の延長 → ④ sine wave(QRS と T が融合) → 心室細動・心停止 |
| 低 K 血症 | U 波の出現、T 波の平低化、ST 低下、QT(QU)延長 → TdP のリスク |
| 高 Ca 血症 | QT 短縮 |
| 低 Ca 血症 | QT 延長(ST 部分が延びる) |
| 病態 | 心電図 | 注意点 |
|---|---|---|
| 肺塞栓症 | 洞頻脈が最も多い。S1Q3T3(I の S 波、III の Q 波と陰性 T)、V1〜V4 の陰性 T、右脚ブロック、右軸偏位 | 心電図正常でも否定できない。S1Q3T3 は有名だが出現頻度は高くない。疑ったら画像へ |
| 心タンポナーデ | 低電位、電気的交互脈(QRS の高さが1拍ごとに変わる)、洞頻脈 | 電気的交互脈は心臓が心嚢液の中で揺れているため。緊急のエコーへ |
| たこつぼ症候群 | 広範な ST 上昇 → 深い陰性 T と QT 延長へ移行 | STEMI と区別できない。冠動脈造影で除外するのが原則 |
| 低体温 | Osborn(J)波、徐脈、QT 延長 | 復温が治療。心室細動を起こしやすく、刺激を最小限に |
| ジギタリス中毒 | 盆状 ST 低下(効果の所見)、多彩な不整脈(心房頻拍+房室ブロックなど) | 低 K で中毒が増悪する。血中濃度と症状を併せて評価 |