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心電図判読ノート ・ リファレンス

鑑別アルゴリズム

頻脈・徐脈・wide QRS・ST 変化を絞り込む。当直で開く用。

頻脈 徐脈 wide QRS ST 変化 波形別インデックス
頻脈(> 100/分)の鑑別
まず血行動態 → QRS 幅 → 規則性
STEP 0 血行動態は?
意識障害/持続する胸痛/急性心不全/ショック のいずれか
診断を待たず、直ちに同期下カルディオバージョン(脈がなければ非同期除細動+CPR)
▼ 安定していれば
STEP 1 QRS 幅は?
NARROW < 0.12 秒
上室性
→ 次に規則性を見る
WIDE ≥ 0.12 秒
まず VT と考える
→ 下の「wide QRS」へ
Narrow QRS ・ 規則的
洞頻脈 … II で陽性の P あり。原因検索が主題(発熱・脱水・出血・疼痛・貧血・低酸素・甲状腺・肺塞栓)
PSVT(AVNRT / AVRT) … 150〜220/分。P が QRS に埋もれて見えない。突然始まり突然止まる
心房粗動 2:1ほぼきっかり 150/分。II・III・aVF に鋸歯状 F 波。迷ったらまずこれを疑う
心房頻拍 … 洞調律と異なる形の P 波が規則的に
Narrow QRS ・ 不規則
心房細動P なし・f 波・RR 絶対不整。最も多い
心房粗動(伝導比が変動) … F 波は規則的だが QRS が不整
多源性心房頻拍 … 3 種類以上の形の P 波。COPD・重症肺疾患
洞調律+頻発する期外収縮 … 基本調律は洞
初期対応の要点
PSVT:迷走神経刺激(修正バルサルバ)→ ATP 急速静注+生食フラッシュ → Ca 拮抗薬/β遮断薬
ATP の注意喘息は禁忌/数秒の心停止を事前説明/記録を回したまま投与/除細動器を用意
心房細動・粗動:レート調節・リズム管理・抗凝固の3本柱。発症48時間超/不明なら血栓評価前に除細動しない(不安定例を除く)
徐脈(< 50/分)の鑑別
消えているのは P か QRS か
STEP 0 症状は?
失神・前失神/急性心不全/持続する胸痛/低血圧・ショック
アトロピン 0.5 mg(総量 3 mg まで)→ 経皮ペーシング/カテコラミン → 循環器へ
▼ 並行して
STEP 1 可逆的原因はないか
β遮断薬・Ca 拮抗薬・ジギタリス(点眼薬も)/高 K 血症/甲状腺機能低下/低体温/下壁梗塞/頭蓋内圧亢進
STEP 2 P 波はどうなっているか
P 波ごと消えている
洞停止・洞房ブロック(洞不全症候群 II 型)
徐脈頻脈症候群(同 III 型)… 頻拍停止直後の長い停止で失神
心房細動+徐脈 … P はなく f 波、RR 不整で遅い
接合部調律 … P なし(または QRS 直後)で 40〜60/分、QRS は狭い
P 波はあるが QRS が落ちる/伝わらない
I 度房室ブロック … PR > 0.20 秒で一定、脱落なし 経過観察可
II 度 Wenckebach … 脱落前に PR が徐々に延長。房室結節。多くは可逆的 低〜中
II 度 Mobitz IIPR 一定のまま突然脱落。His 以下 無症状でもペーシング適応
III 度(完全) … P と QRS が無関係(房室解離)。QRS 幅広+30〜40/分は不安定 
2:1 伝導Wenckebach か Mobitz II か分類できない。QRS 幅などで判断し循環器へ
注意
アトロピンは房室結節にしか効かない。QRS が広い infranodal のブロック(Mobitz II・幅広 QRS の完全ブロック)では効きにくく、早期にペーシングへ
下壁梗塞の房室ブロックは房室結節性で一過性が多い。前壁梗塞の房室ブロックは予後不良
wide QRS(≥ 0.12 秒)の鑑別
頻拍なのか、もともと広いのか
wide QRS + 頻拍
心室頻拍(VT)まずこれ。虚血性心疾患・心筋症の既往があれば強く示唆
上室性頻拍+脚ブロック/変行伝導
WPW + 心房細動幅広・不整・非常に速い(>200/分)房室結節を抑える薬は禁忌
多形性 VT(torsades) … QRS の振幅と向きがねじれるように変化。QT 延長を伴う
高 K 血症 … 幅広で緩徐、sine wave へ移行しうる
VT を支持する所見
虚血性心疾患・心筋症の既往(最も強力)
房室解離(QRS と無関係な P 波)
capture beat / fusion beat
QRS 幅 > 0.16 秒/胸部誘導の concordance北西軸
血圧が保たれていても VT は否定できない
頻拍でない wide QRS
右脚ブロック … V1 で rsR'(M 字型)、V5・V6 で幅広い S 波
左脚ブロック … V5・V6 で幅広いノッチのある R 波。虚血の判定が困難(Sgarbossa 基準)
WPW短い PR + δ波
心室ペーシング … スパイクの後に幅広 QRS
高 K 血症テント状 T + P 消失を伴う
Na チャネル遮断薬の中毒(三環系抗うつ薬など)… QRS 延長+aVR の R 波増高
禁忌
診断が確定していない wide QRS 頻拍にベラパミルを使わない。VT だった場合、血圧が急落し心停止に至りうる
ST 変化の鑑別
まとまりで見る・対側性変化を探す・前回と比べる
ST 上昇
STEMI解剖学的なまとまり/凸型が多い/対側性 ST 低下あり/数時間で動く
急性心膜炎びまん性/凹型/対側性変化なし/PR 低下が特徴
早期再分極 … V2〜V5 中心/凹型・J 点にノッチ経時変化しない
Brugada 症候群V1・V2 の coved 型 ST 上昇+陰性 T。発熱で顕在化
たこつぼ症候群 … 広範な ST 上昇 → 深い陰性 T と QT 延長へ。STEMI と区別できない
左室瘤 … 陳旧性前壁梗塞後に ST 上昇が残存。異常 Q 波を伴い、経時変化しない
左室肥大・左脚ブロック二次性 ST-T 変化。深い S 波のある誘導で ST 上昇に見える
ST 低下
心筋虚血(NSTEMI・不安定狭心症) … 水平〜下降型。症状と経時変化を併せて評価
後壁梗塞の鏡像V1〜V3 の ST 低下+高い R 波+陽性 TV7〜V9 を追加
左主幹部・多枝病変広範な ST 低下+aVR の ST 上昇 重症
左室肥大(strain パターン) … 高い R 波の誘導(V5・V6・I・aVL)で ST 低下+陰性 T
ジギタリス効果 … 盆状(お皿型)の ST 低下。中毒とは別
低 K 血症 … ST 低下+U 波+T 平低
頻拍そのもの … 頻拍中は非虚血性の ST 低下が出うる。停止後に再検する
判断のコツ
1誘導だけの変化は採用しない。隣接する2誘導以上のまとまりで評価する
前回の心電図を探す。「異常か」より「変化したか」のほうが強い情報
迷ったら STEMI として扱い、循環器に相談する。見逃しの損失のほうがはるかに大きい
波形別クイックインデックス
「この波が変」から引く
P 波が見えない
心房細動(f 波・RR 絶対不整)/PSVT(QRS に埋もれている)/接合部調律心室調律高 K 血症(P が消失)/洞停止
T 波が高い・尖っている
高 K 血症(テント状、幅が狭い)/超急性期の心筋梗塞(hyperacute T、幅が広い)/de Winter T 波/早期再分極・正常変異
T 波が陰性
心筋虚血Wellens 症候群(V2・V3 の深い対称性陰性 T)/肺塞栓(V1〜V4)/左室肥大 strain/たこつぼ/脚ブロックの二次性変化/中枢神経病変(くも膜下出血)/V1・III の陰性 T は正常のことあり
QT が長い
低 K・低 Mg・低 Ca薬剤(抗不整脈薬・抗精神病薬・マクロライド・キノロン・制吐薬)/徐脈先天性 QT 延長症候群/頭蓋内病変/低体温/虚血 → QTc > 0.50 秒で TdP 危険域
QRS の電位が低い(低電位)
心嚢液貯留・心タンポナーデ(+電気的交互脈なら緊急エコー)/高度肥満/肺気腫・気胸/粘液水腫/広範な心筋障害・アミロイドーシス
U 波が目立つ
低 K 血症(最も重要)/徐脈/薬剤/正常変異(徐脈時の V2・V3)
異常 Q 波
幅 ≥ 0.04 秒 かつ 同誘導 R 波の 1/4 以上の深さ → 陳旧性心筋梗塞/肥大型心筋症/左脚ブロック/WPW(δ波が Q に見える)/正常の中隔 q 波と混同しない
「変な波形」を見たら最初に疑うこと
電極の付け間違い(aVR で P が陽性なら左右の取り違え)/記録条件(25 mm/秒・10 mm/mV か)/アーチファクト(体動・振戦が心房細動や VT に見える)
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免責事項:本コンテンツは医療従事者の学習・参考を目的としたものであり、医療機器ではありません。記載の数値・基準・薬剤の扱いは一般的な目安であり、実際の診療は各施設のプロトコルと患者の病態に従ってください。診断・治療の最終判断は必ず担当医師が行ってください。