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初期研修医向け 緩和ケア講義

緩和ケアノート

評価して記録する。定時薬とレスキューを組む。同じ物差しで測り直す。オピオイドで怖いのは量ではなく、評価せずに始めることと、始めたあと見に行かないこと。

まず、この症例を見てください
78歳男性。膵癌、肝転移。背部痛でモルヒネ徐放錠 20mg/日を開始。
翌日「まだ痛い」。40mg/日へ増量。その翌日も「まだ痛い」。80mg/日へ増量。
3日目、日中もうとうとして会話が続かない。手足がときどきぴくつく。
採血で Cr 1.9(開始時 0.8)。この間、食事量が落ち、飲水も減っていた便は5日出ていない。
項目開始時3日目
モルヒネ20 mg/日80 mg/日
安静時 NRS記録なし記録なし
レスキューの使用効いたかは未確認効いたかは未確認
意識清明傾眠・ミオクローヌス
Cr0.8 mg/dL1.9 mg/dL ↑
最終排便5日前
下剤処方なし処方なし
❌  よくある間違い
痛みが取れない → 量が足りない → 増やす」。
増やす根拠はNRSとレスキューの回数の2つで、そのどちらも記録されていません。
効いたかどうかを確かめないまま倍々に増やし、患者を眠らせてしまいました。
⚡ 増量の幅はいまの1日量の30〜50%増。倍にはしない。効いてくる時間を待ってから次を判断する
眠気とミオクローヌスが揃ったら、量ではなく腎機能を見に行く。食べられず脱水になり、モルヒネの活性代謝物がたまっていた
便秘は必発で耐性ができない。下剤が処方されていない。放置された便秘は、数日後に嘔気や腹痛として返ってくる
「痛い」と言われて増やしたこと自体は間違いではない。落とし穴は、増やす前と後のNRSを記録せず、レスキューが効いたかを確かめず、腎機能の変化を見に行かなかったところにある。評価して記録していれば、3日目に気づく必要はなかった。
緩和ケアは、評価して記録し、組んで、測り直すの繰り返しでできています。
第1章から順に学んでいきましょう。
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学習進捗 0 章完了
第1章から始めましょう
第1部 ・ 評価する
1 緩和ケアはいつから始まるか対象は誰か/全人的苦痛/当直で呼ばれる場面と、その答えがどの章にあるか 2 痛みを評価する部位と性状/持続痛と突出痛/侵害受容性か神経障害性か/NRSと記録
第2部 ・ 始めて、調節する
3 鎮痛薬を始める非オピオイドの天井効果/三段階ラダーは階段ではない/開始量/麻薬処方の実務 4 オピオイドを選ぶ腎機能・剤形・副作用・痛みの性質/6成分の性格/突出痛だけに使う製剤 5 定時薬とレスキューを組むレスキューは1日量の6分の1/増やす根拠は2つ/増やしてはいけない4つの場面
第3部 ・ 副作用と行き詰まり
6 副作用を先回りする便秘は耐性ができない/嘔気は1〜2週/呼吸抑制の見分け方とナロキソン 7 増やす以外の手を持つ鎮痛補助薬/骨転移への放射線と骨修飾薬/脊髄圧迫は待てない/メサドン 8 経路を変える・薬を変える換算して2割減らす理由/持続皮下注と早送り/貼付剤の立ち上がりと加温
第4部 ・ 症状と看取り
9 痛み以外の苦痛まず治療できる病態を探す/呼吸困難/消化管閉塞/せん妄/食欲不振と悪液質 10 看取りの数日と当直の判断予後の見立て/死前喘鳴と輸液/鎮静の要件/家族への説明
まとめ
まとめ早見表呼ばれたときの順番、開始量とレスキュー、副作用対策、看取りの数日を1枚に 薬から引くリファレンスオピオイド・鎮痛補助薬・便秘や嘔気の薬・骨転移の薬を、薬剤名から引く
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ツール
オピオイド換算経口モルヒネ換算量で一元管理。切り替え時の減量と、副作用別の切り替え候補も表示 計算ツール eGFR 計算腎機能が落ちたときのオピオイド選択に。日本人補正・CKD-EPI式・CCr対応 計算ツール 症例トレーニング当直で呼ばれる9場面を症例クイズで。ヒントを1つずつ開いて判断の順番を確かめる クイズ
関連サイト
MedCalc Tools — medcalcs.app救急・循環器・糖尿病など医療計算ツール

このシリーズについて

緩和ケアが難しく感じられるのは、覚える薬が多いからではありません。評価せずに薬を動かし、動かしたあと見に行かないからです。オピオイドを出すこと自体は難しくありません。難しいのは、出す前に何を評価するかと、出したあと何を見に行くかです。

このシリーズは、評価して記録する → 定時薬とレスキューを組む → 同じ物差しで測り直すという3つの手順を、章が変わっても繰り返す形で進みます。もう一本、治療できる原因があるなら、それを治すことが最大の緩和という原則が全体を貫きます。胸水を抜く、尿閉に導尿する、高カルシウム血症を下げる。これらはモルヒネでは代わりになりません。各章は概ね15〜20分。読了ボタンを押すと進捗が保存され、次回の続きがすぐわかります。データはすべてこの端末のみに保存され、外部には送信されません。

内容は日本緩和医療学会のガイドラインと各薬剤の電子添文を主な拠りどころとしています。がん患者を軸に構成し、非がんの呼吸困難などには要所で触れています。薬剤名はあくまで代表例であり、実際の選択は施設の採用薬と院内の方針を優先してください。用量は投与前に必ず電子添文で確認してください。

免責事項:本コンテンツは医療従事者の学習・参考を目的としたものであり、医療機器ではありません。記載の数値・基準・薬剤の扱いはあくまで一般的な目安であり、実際の診療は各施設のプロトコルと患者の病態に従ってください。診断・治療の最終判断は必ず担当医師が行ってください。