何を聞くか/持続する痛みと突出する痛みを分ける/侵害受容性か神経障害性か/NRSの使い方と記録の残し方。
痛みの問診は項目が多く見えますが、実際に薬の選択を変えるのは次の6つです。
| 聞くこと | 何が決まるか |
|---|---|
| 部位。どこが痛むか、指で示せるか | 骨転移か、内臓か、神経の走行に沿うか。画像で確かめる場所も決まる |
| 性状。どんな痛みか | 侵害受容性か神経障害性か(§3)。鎮痛補助薬が要るかどうか |
| 時間パターン。一日中か、ときどきか | 定時薬を増やすのか、レスキューを整えるのか(§2) |
| 強さ。10段階でいくつか | 効果判定の物差し。定時薬の量(§4) |
| 増悪と寛解。何をすると強まるか、何で楽になるか | 体動で誘発されるなら骨転移や病的骨折を疑う。前もってレスキューを使う組み立てになる |
| 生活への影響。眠れるか、食べられるか、動けるか | 治療の目標。数字より本人の言葉で残す |
問診と同じ回でその部位を診察します。骨転移が疑わしい部位は叩いて痛みが響くか、体位で変わるか。腹部なら圧痛と腸蠕動音、腹膜刺激徴候。診ずに聞くだけで済ませると、消化管閉塞や病的骨折のような、鎮痛薬とは別の対応が要る状態を取り逃します。
この2つを分けないと、定時薬を増やすべき患者にレスキューを足し、レスキューを整えるべき患者の定時薬を増やして眠らせてしまいます。
| 持続痛 | 突出痛 | |
|---|---|---|
| 形 | 一日の大半、途切れずにある | ふだんは落ち着いているのに、一過性に強くなる |
| 対応 | 定時薬で底上げする | レスキューで山を削る |
| 増やす根拠 | 安静時のNRSが下がらない | レスキューの回数と、効いているかどうか |
突出痛は、誘因の有無でさらに分かれます。ここまで分けると、レスキューをいつ飲むかが決まります。
| 型 | 例 | 使い方 |
|---|---|---|
| 予測できる | 体動、処置、排便、食事 | 動く前に先回りして使う。痛くなってからでは間に合わない |
| 予測できない | 誘因なく突然強くなる | 起きたらすぐ使えるよう、手元に置いておく |
見分け方は簡単で、痛くなる時刻が定時薬の服用時刻とそろっているかを見ます。ここは記録がないと分かりません。何時に痛くなり、何時にレスキューを使ったかを、時刻で残してもらいます。
痛みの性状を聞く理由はひとつで、オピオイドだけで取れる痛みかどうかが変わるからです。
| 種類 | 患者の言葉 | 代表 | 薬の効き方 |
|---|---|---|---|
| 体性痛 (侵害受容性) | 「ここが痛い」と一点を指せる。ずきずき、鋭い。動くと響く | 骨転移、皮膚、筋、術後創 | オピオイドとNSAIDsがよく効く。体動時痛は取りきれないことがある |
| 内臓痛 (侵害受容性) | 手のひらで漠然と示す。重い、鈍い、押される感じ。悪心を伴う | 肝転移の被膜伸展、腸管、膵 | オピオイドがよく効く |
| 神経障害性 | しびれる、電気が走る、焼ける。触れただけで痛い | 神経叢浸潤、脊椎転移の神経根圧迫、化学療法後 | オピオイドだけでは取りきれないことが多い。鎮痛補助薬を足す(第7章) |
ひとりの患者に何種類も同時に起きます。骨転移の体性痛に、脊椎転移からの神経根症状が乗っているのは日常的な組み合わせです。痛みの部位ごとに性状を聞くと取りこぼしません。「痛みはどうですか」ではなく「腰の痛みはどうですか」「足のしびれはどうですか」と分けて聞きます。
強さは0から10の数字で聞きます。0が痛みなし、10が想像できる最悪の痛み。これをNRSと呼びます。
ひとつの数字では足りません。安静時は2でも体動時は8という患者は珍しくなく、この2つを分けて記録しないと、定時薬を増やすべきなのかレスキューを整えるべきなのかが後から読めなくなります。
記録の形は決まっています。治療を変える前のNRSと、変えたあとのNRSを、同じ物差しで残す。これが揃っていないと、効いたかどうかを自分以外の人が判断できません。
| いつ測るか | 何のため |
|---|---|
| 治療を変える前 | 出発点。これが無いと効果を判定できない |
| レスキューを使って30〜60分後(経口) | そのレスキューが効いたか。効かないなら1回量が足りない(第5章) |
| 翌日、同じ時間帯 | 定時薬を増やすかどうか。レスキューの回数と並べて見る |
数字だけでなく、本人の言葉も一行残します。「夜通し眠れた」「トイレまで歩けた」は、NRSが1しか下がっていなくても治療がうまくいっている証拠になります。逆に「数字は下がったが一日中眠い」は、次の章から扱う副作用の話です。
この患者の痛みを分解して、次に何をするかを考えてください。