便秘は必発で耐性ができない/嘔気は最初の1〜2週/眠気・せん妄・ミオクローヌス/呼吸抑制の見分け方とナロキソン。
眠気も嘔気も、続けているうちに体が慣れて軽くなります。便秘だけは慣れません。オピオイドを使っているあいだずっと続きます。だから、起きてから下剤を出すのではなく、始めるときに一緒に出します。
| 種類 | 代表 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 浸透圧性 | 酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール製剤 | 酸化マグネシウムは腎機能低下で高マグネシウム血症。高齢者と腎障害では定期的に測る |
| 刺激性 | センノシド、ピコスルファート | 腹痛。連用で効きにくくなることがある。頓用として重ねる使い方が向く |
| 上皮機能変容薬など | ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバット | 浸透圧性で足りないときの選択肢 |
| 末梢性オピオイド受容体拮抗薬 | ナルデメジン | オピオイド誘発性便秘症そのものに効く。消化管閉塞やその疑いには禁忌。下痢が出やすい。オピオイドを中止したら本剤も中止する |
下剤を出したあとは、出たかどうかを確かめます。「便秘薬は出してあります」で終わると、3日後に嘔気と腹痛で呼ばれます。最終排便日を毎日の記録に入れておくのがいちばん確実です。
オピオイドによる嘔気は、開始時と増量時に出て、多くは1〜2週で軽くなります。ここに耐性ができるからです。この見通しを患者に伝えておくと、その期間を乗り切れます。
使う薬は、原因の見立てで選びます。代表はプロクロルペラジン、メトクロプラミド、ハロペリドール、オランザピンです。錐体外路症状とせん妄には注意します。
| 疑うもの | 手がかり | 対応 |
|---|---|---|
| オピオイドそのもの | 開始・増量の直後。1〜2週で軽くなる | 嘔気時の指示。続くなら成分の変更(第8章) |
| 便秘 | 最終排便が数日前。腹部膨満 | 下剤を先に。制吐薬を重ねない |
| 消化管閉塞 | 嘔吐、排ガス停止、腹部膨満、金属音 | 画像で確かめる。ナルデメジンは使わない(第9章) |
| 高カルシウム血症 | 口渇、多尿、傾眠、便秘も伴う | 採血する。治療できる原因(第1章 §3) |
| 脳転移・頭蓋内圧亢進 | 頭痛、朝方に強い、神経所見 | 画像。ステロイドを考える |
| 薬剤 | 抗がん薬、抗菌薬、鉄剤など | 被疑薬を整理する |
嘔気が2週を超えて続くときは、オピオイド以外の原因を探し直します。耐性ができるはずの期間を過ぎているので、別の理由があると考えるほうが自然です。
この3つはつながっています。眠気が強まり、話がかみ合わなくなり、手足がぴくつくという順で出てくることがあり、いずれもオピオイドが多すぎるか、たまっているサインです。
| 症状 | ふつうの経過 | それを外れたら |
|---|---|---|
| 眠気 | 開始・増量から数日で軽くなる | 数日を過ぎても強い、痛みは取れているのに眠い → 減量(第5章 §4) |
| せん妄 | オピオイドだけが原因のことは少ない | 薬剤・脱水・尿閉・便秘・感染・高カルシウム血症・脳転移・癌性髄膜炎を探す(第9章) |
| ミオクローヌス | ふつうは起きない | 高用量か、腎機能低下による蓄積。減量か成分の変更(第4章 §3、第8章) |
そのほかに、掻痒、口渇、尿閉、発汗があります。掻痒はヒスタミン遊離によるもので、成分を変えると軽くなることがあります。尿閉は高齢男性で見落とされやすく、せん妄の原因としても効いてきます。落ち着かない患者を見たら、腹部を触って膀胱を確かめてください。
研修医がいちばん恐れているのはここですが、痛みに合わせて調節されているかぎり、致命的な呼吸抑制はまず起こりません。痛みそのものが呼吸を促す方向に働くためです。起こるのは、痛みが急に取れたときや、腎機能が落ちて薬がたまったときです。
この順番が大事で、いきなり呼吸が止まることはありません。だから見張るべきは呼吸数と覚醒の程度です。酸素飽和度は、酸素を投与していると最後まで下がらないことがあり、当てになりません。
| 状態 | 所見 | 対応 |
|---|---|---|
| 問題なし | 呼びかけで覚醒し会話できる。呼吸数が保たれている | そのまま。眠れていること自体は良い徴候 |
| 注意 | 強い眠気。呼びかけないと眠り続ける。呼吸数が落ちてきた | 次の定時薬を飛ばす。原因(腎機能・脱水・併用薬)を探す |
| 危険 | 強い刺激でも覚醒しない。呼吸数が明らかに少ない。縮瞳 | ナロキソン。応援を呼ぶ |
そして、危険な状態でないならナロキソンを使わないことのほうが多い。呼吸数が保たれていて呼びかけで開眼するなら、次の定時薬を飛ばして原因を探すほうが安全です(第4章 §5)。
この嘔気にどう対応するかを考えてください。