鎮痛補助薬/骨転移への手/脊髄圧迫は待てない/メサドンと神経ブロック。
| 顔 | 手がかり | 次の手 |
|---|---|---|
| 神経障害性 | しびれる、電気が走る、焼ける、触れただけで痛い | 鎮痛補助薬(§2)、メサドン、神経ブロック(§4) |
| 骨転移の体動時痛 | 安静では平気なのに、動く瞬間だけ激痛 | 放射線、骨修飾薬、固定。レスキューの先回り(§3) |
| 治療できる原因が残っている | 経過に合わない急な悪化、神経所見、発熱、腹部所見 | 原因を治す。それが最大の緩和(第1章 §3) |
鎮痛補助薬は、本来は鎮痛薬として作られていない薬を、痛みに使うものです。神経障害性の痛みに対して、オピオイドに足して使います。
| 薬 | 使いどころ | 気をつけること |
|---|---|---|
| ミロガバリン | 神経障害性疼痛。少量から1週間以上あけて段階的に増やす | 眠気とめまい。腎機能で開始量も推奨量も変わる |
| プレガバリン | 同上。使用経験が長い | 眠気、めまい、浮腫、体重増加。腎機能で調整。高齢者は少量から |
| デュロキセチン | しびれや灼熱感が続くとき | 嘔気、食欲低下。中止時は漸減。がん疼痛そのものの効能は持たない |
| ステロイド | 神経や脊髄の圧迫、頭蓋内圧亢進、骨転移痛、肝被膜伸展 | 高血糖、不眠、せん妄、易感染。漫然と続けない |
| ケタミン | 難治性の神経障害性疼痛。専門科と組んで使う | 悪夢、せん妄、血圧上昇。研修医が単独で始める薬ではない |
始め方の原則は共通しています。少量から、1剤ずつ、間隔をあけて増やす。同時に2剤足すと、効いたのがどちらか分からず、眠気が出たときにどちらを止めるかも決められません。用量と腎機能ごとの調節は薬から引くリファレンスにまとめてあります。
骨転移の痛みは、薬だけで追いかけると行き詰まります。放射線が効きます。
| 手 | 中身 | 覚えておくこと |
|---|---|---|
| 放射線 | 限局した有痛性骨転移に照射する | 効果が出るまでに数日から数週かかる。その間の鎮痛は続ける |
| 骨修飾薬 | デノスマブ、ゾレドロン酸。骨関連事象を減らす | 低カルシウム血症と顎骨壊死。開始前に歯科を通す。カルシウムとビタミンDを補う |
| 整形外科的な固定 | 病的骨折、切迫骨折 | 荷重骨は折れる前に相談する |
| ラジウム-223 | 去勢抵抗性前立腺癌の骨転移 | 適応が限られる。専門科の判断 |
脊髄圧迫を疑う所見は、痛みそのものより神経の症状です。下肢の脱力、しびれの範囲が広がる、尿が出にくい、尿が漏れる、肛門周囲の感覚が鈍い。患者は痛みしか訴えないことがあるので、こちらから聞きます。
メサドンは、他の強オピオイドで治療が難しい痛みに使う薬です。他の強オピオイドとの交差耐性が少なく、NMDA受容体への拮抗作用を持つため、神経障害性の痛みに効果が期待できます。
| メサドンの性質 | |
|---|---|
| 適応 | 他の強オピオイド鎮痛剤で治療困難な中等度から高度のがん疼痛。必ず他剤から切り替えて使う。最初に選ぶ薬ではない |
| 処方の要件 | 麻薬施用者免許に加えて適正使用の講習を受けて登録した医師であること。調剤する薬局にも登録された薬剤師が要る |
| 危険 | QT延長による重篤な不整脈。定期的な心電図が必要 |
| 扱いにくさ | 半減期が長く個体差が大きい。効果の立ち上がりが遅く、蓄積による呼吸抑制が遅れて出る |
| 換算 | 単純な比で換算できない。もとのオピオイドの量によって比が変わる |
神経ブロックも、薬で行き詰まったときの手です。膵癌や上腹部の内臓痛に対する腹腔神経叢ブロックのように、効けばオピオイドを減らせることがあります。適応が合う患者は限られますが、合えば効果が大きい。麻酔科やペインクリニックに相談します。
この患者に今日何をするかを考えてください。