Wenckebach と Mobitz II の決定的な違い/完全房室ブロックと補充調律/ペーシングの適応。
心拍数の数字そのものより、その徐脈が患者に何を起こしているかが先です。健康な運動選手の 45/分は放置してよく、80歳の 45/分で失神していれば緊急です。
同時に、薬や代謝の異常で起きた治せる徐脈でないかを必ず確認します。ここを見落とすとペースメーカーが不要な患者に侵襲的な処置をすることになります。
| 可逆的原因 | 確認するもの |
|---|---|
| 薬剤 | β遮断薬・Ca 拮抗薬(ジルチアゼム/ベラパミル)・ジギタリス・抗不整脈薬。点眼のβ遮断薬も忘れない |
| 電解質 | 高 K 血症(第7章)。腎不全・K 保持性利尿薬・ACE 阻害薬/ARB |
| 内分泌・代謝 | 甲状腺機能低下症、低体温 |
| 虚血 | 下壁梗塞(右冠動脈は洞結節・房室結節を養う)→ 第6章 |
| 神経 | 頭蓋内圧亢進(Cushing 現象:高血圧+徐脈+不規則呼吸) |
洞結節そのものの機能低下、または洞結節から心房への伝導障害です。Rubenstein 分類が広く使われます。
| 型 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| I 型 | 持続性の洞徐脈 | 運動や発熱でも心拍数が上がらない(変時性不全) |
| II 型 | 洞停止・洞房ブロック | P 波ごと丸ごと欠落し、長い休止が生じる |
| III 型 | 徐脈頻脈症候群 | 心房細動などの頻拍が停止した直後に長い停止が生じ、失神を起こす |
| 分類 | 心電図 | 主なブロック部位 | 危険度 |
|---|---|---|---|
| I 度 | PR > 0.20 秒で一定。脱落なし | 房室結節 | 低無症状なら経過観察 |
| II 度 Wenckebach (Mobitz I) | PR が少しずつ延長し、ついに QRS が脱落 | 房室結節 | 低〜中多くは良性・可逆的 |
| II 度 Mobitz II | PR は一定のまま、突然 QRS が脱落 | His 束以下 (infranodal) | 高完全ブロックへ進行しうる |
| III 度 (完全) | P と QRS が互いに無関係(房室解離) | 房室結節〜His 以下 | 高ペーシングの適応 |
見た目はどちらも「時々 QRS が落ちる」だけです。しかし落ちている場所が違います。
心房から心室へ興奮がまったく伝わらない状態です。心房は洞結節のペースで、心室はブロック部位より下から出る補充調律のペースで、それぞれ勝手に動きます(房室解離)。
心電図では、P 波の間隔は一定・QRS の間隔も一定・しかし両者に関係がないという形になります。PR 間隔が拍ごとにバラバラに見えるのが特徴です。
| 補充調律の出どころ | レート | QRS 幅 | 安定性 |
|---|---|---|---|
| 房室接合部 (His 束より上) | 40 〜 60 /分 | 狭い | 比較的安定。アトロピンが効くことがある |
| 心室 (His 束より下) | 20 〜 40 /分 | 広い | 不安定いつ止まってもおかしくない |