効果判定は何で見るか/効かないときの4つの理由/疾患別の治療期間/点滴から内服へ/狭める。
判断の主役は数字ではありません。
| 見るもの | 読み方 |
|---|---|
| バイタル | 解熱、脈拍の低下、呼吸数の低下、血圧の安定 |
| 意識・活気 | 会話が戻る、目つきが変わる。高齢者では最も早く動くことがある |
| 食事摂取 | 食べられるようになったかは、検査値より正直なことがある |
| 局所の所見 | 発赤の縮小、疼痛の軽減、排膿の減少、酸素需要の低下 |
| グラム染色の再検 | 菌量が減っているか、貪食像が増えているか(第5章) |
| CRP | 遅れて動く。単独では判断材料にしない |
第1章で挙げた4つに戻ります。薬を広げる前に、この順で確認してください。
| 理由 | 確認すること | |
|---|---|---|
| 1 | 薬が外れている | 培養と感受性。耐性菌ではないか。量が足りていないか |
| 2 | 届いていない | フォーカスは合っているか。移行しない場所ではないか(第8章) |
| 3 | 感染症ではない | 薬剤熱、血栓、悪性腫瘍、膠原病(第1章) |
| 4 | ドレナージが必要 | 膿瘍・閉塞・感染したデバイス。薬だけでは治らない |
もう一つ、見落とされやすいのが新しい感染の発生です。入院中にカテーテル関連血流感染や偽膜性腸炎が加わっていることがあります。経過中に発熱の性質が変わったら、最初の診断だけで説明しようとしないでください。
期間は「解熱したら終わり」ではなく、疾患ごとにおおよそ決まっています。以下はサンフォードガイドを拠りどころとした目安です。
| 疾患 | おおよその期間 | 備考 |
|---|---|---|
| 市中肺炎(軽症〜中等症) | 5〜7日 | 解熱し安定していることが前提 |
| 腎盂腎炎 | 7〜14日 | 薬剤と経過で変わる |
| 急性前立腺炎 | 2〜4週 | 尿路感染の感覚で切らない |
| 蜂窩織炎 | 5〜10日 | 改善が遅ければ延長する |
| 胆管炎・胆嚢炎 | ドレナージ後 4〜7日 | ソースコントロールが効けば短くできる |
| 腹腔内感染 | ドレナージ後 4〜7日 | 同上 |
| 黄色ブドウ球菌の菌血症 | 最低2週間、合併症があれば4〜6週 | 血液培養の陰性化日を起点にする |
| 感染性心内膜炎 | 4〜6週 | 菌と弁による |
| 化膿性脊椎炎・骨髄炎 | 6週以上 | 移行が悪く長期になる |
| 化膿性関節炎 | 2〜4週 | ドレナージを伴う |
| 細菌性髄膜炎 | 菌により7日〜3週 | 髄膜炎量で投与する(第8章) |
期間を決めるとき、起点をどこに置くかも重要です。黄色ブドウ球菌の菌血症では、抗菌薬を始めた日ではなく血液培養が陰性化した日から数えます。だから第3章で「陰性化の確認のために採り直す」と書きました。
切り替えの条件と、選ぶ薬です。
| 切り替えてよい条件 |
|---|
| 解熱し、バイタルが安定している |
| 経口摂取ができ、消化管が使える |
| 吸収の確かな経口薬がある |
| フォーカスが内服で治療できる場所である |
| 内服に落とさない病態 | 理由 |
|---|---|
| 感染性心内膜炎 | 原則として点滴で完遂する |
| 化膿性脊椎炎・骨髄炎 | 移行が悪い。長期の点滴が基本 |
| 黄色ブドウ球菌の菌血症 | 転移巣のリスクがあり、点滴で管理する |
| 髄膜炎 | 髄液への移行と濃度が必要 |
冒頭のひっかけ症例に戻ります。あの患者は解熱していたので、切り替え条件の最初の2つは満たしていました。外したのは残りの2つです。吸収の悪い薬を選び、前立腺という届きにくい場所を考えず、尿路感染の期間で切った。3つの誤りが重なっていました。
培養と感受性が出たら、広域から狭い薬へ切り替えます。第6章で「広げたら狭める前提で始める」と書いた、その回収です。
| 狭めるときに確認すること |
|---|
| 起因菌が同定され、感受性が分かっている |
| 臨床的に改善している |
| その薬がフォーカスに届く |
| ドレナージすべきものが残っていない |
この判断をどう評価しますか。治療をどう進めますか。