なぜ自分で染めるのか/Geckler分類で検体の質を見る/標本の作り方/脱色が結果を決める/鏡検の進め方。
検査室に出せば結果は返ってきます。それでも自分で染める価値は3つあります。
| 自分で染めると | |
|---|---|
| 速い | 培養は数日、報告も待ち時間がある。自分で染めれば10分で起因菌の見当がつく |
| 検体の質が分かる | 唾液を提出していたことがその場で分かる。培養結果を3日待って気づくのとは速度が違う |
| 治療が変わる | グラム陽性球菌か陰性桿菌かで、初期に選ぶ薬が変わる。効果判定にも使える |
本章では模式図や顕微鏡写真は載せていません。実物の見え方は成書や施設の顕微鏡で確認してください。ここで扱うのは手順と、見るべき順序です。
質の悪い検体をどれだけ丁寧に染めても、読み取れるのは通り道の菌です。まず弱拡大で質を判定し、質が悪ければ採り直します。
喀痰では、白血球が多く、扁平上皮が少ないものが下気道由来です。扁平上皮は口腔粘膜の細胞なので、多ければ唾液の混入を意味します。100倍の視野で数えて分類したものが Geckler分類です。
| 群 | 白血球(/視野) | 扁平上皮(/視野) | 扱い |
|---|---|---|---|
| 1 | < 10 | > 25 | 唾液。採り直す |
| 2 | 10〜25 | > 25 | 唾液の混入が多い。採り直す |
| 3 | > 25 | > 25 | 混入が多い。採り直す |
| 4 | > 25 | 10〜25 | 使える |
| 5 | > 25 | < 10 | 最も良質 |
| 6 | < 25 | < 10 | 唾液ではない。好中球減少では有用 |
尿では膿尿があるかを見ます。喀痰以外の検体でも考え方は同じで、目的の場所の細胞成分があるかを最初に確認します。
染色の失敗の多くは、染める前の段階で決まっています。
| 手順 | 失敗すると | |
|---|---|---|
| 1 | 膿性の部分を選ぶ。喀痰は白く濁った部分、黄色い部分をつまむ | 透明な部分を塗ると唾液を見ることになる |
| 2 | スライドガラスに薄く広げる | 厚いと脱色が届かず、すべて紫に見える |
| 3 | 完全に乾かす | 濡れたまま固定すると、洗浄で流れる |
| 4 | 火炎固定(軽く数回通す) | 加熱しすぎると菌の形が壊れる |
4段階です。施設によって試薬名や時間が違うので、院内の手順書を優先してください。ここでは何をしているかを押さえます。
| 操作 | 何が起きているか | |
|---|---|---|
| 1 | クリスタルバイオレット(紫) | すべての菌が紫に染まる |
| 2 | ヨード液(媒染) | 紫の色素を菌体内で複合体にして固定する |
| 3 | 脱色(アルコール系) | 厚い細胞壁を持つ菌は紫を保つ。薄い菌は色が抜ける |
| 4 | サフラニンなど(赤) | 色が抜けた菌が赤く染まる |
いきなり油浸で菌を探さないでください。順序があります。
| 倍率 | 見るもの | |
|---|---|---|
| 1 | 弱拡大(100倍) | 検体の質。白血球と扁平上皮の数。Geckler分類 |
| 2 | 弱拡大 | 標本のなかで白血球が集まっている場所を探し、そこに狙いを定める |
| 3 | 油浸(1000倍) | 菌の形・配列・染色性。1種類か複数か |
| 4 | 油浸 | 白血球の中に菌がいるか(貪食像) |
| 5 | 油浸 | 複数の視野で確認する。1視野で決めない |
この標本から、何が言えるでしょうか。