培養をどこから何セット採るか/検体の質/炎症マーカーで分かること分からないこと/画像の使い分け/フォーカス不明の詰め方。
抗菌薬を選び、あとで狭めるための根拠は培養です。その培養が空振りすると、広域抗菌薬を続けるしかなくなります。採り方の要点を検体ごとに押さえます。
| 検体 | 要点 | やりがちな失敗 |
|---|---|---|
| 血液培養 | 2セットを別々の穿刺部位から。1セットは好気+嫌気の2本 | 1セットで済ませる/同じ部位から2本採る |
| 血液培養の量 | 採血量が陽性率を最も左右する。1本あたり規定量を入れる | 少量しか入れず、陰性を「菌血症なし」と読む |
| 喀痰 | 唾液ではないものを出させる。うがい後、深く咳をして採る | 唾液を提出し、口腔内常在菌を起因菌と読む |
| 尿 | 中間尿。留置カテーテルがあるなら新しいものに入れ替えてから採る | 古いカテーテルのバッグから採り、バイオフィルムの菌を拾う |
| 創部 | 表面のぬぐいではなく深部の検体・組織 | 表面のスワブで定着菌を拾い、それに合わせて薬を変える |
| 髄液・関節液・胸水 | 抗菌薬の前に採る。採取したらすぐ提出 | 提出が遅れて菌が死ぬ |
ただし例外があります。黄色ブドウ球菌が血液培養から出たら、1セットでも汚染として扱いません。この菌は血管内に居座り、心臓弁や脊椎に飛びます。出た時点で「どこに巣を作っているか」を探し始める菌です。第5章でもう一度扱います。
提出された検体が目的の場所のものかを、培養の結果より先に確認します。質の悪い検体から出た菌は、起因菌ではなく通り道の菌です。
| 検体 | 質の指標 | 質が悪いと |
|---|---|---|
| 喀痰 | 白血球が多く、扁平上皮が少ないものが下気道由来。扁平上皮が目立つものは唾液 | 口腔内常在菌が並び、起因菌が埋もれる |
| 尿 | 採取方法と、膿尿があるか | 無症候性細菌尿を治療してしまう |
| 創部 | 深部から採ったか | 定着菌に合わせて広域抗菌薬に変えてしまう |
白血球・CRP・プロカルシトニンは、フォーカスを教えてくれません。どこに感染があるかは、これらの数字からは決して分かりません。
| 使えること | 限界 | |
|---|---|---|
| 白血球 | その場で分かる。左方移動は参考になる | 重症では減ることがある。ステロイドで上がる |
| CRP | 経過を追う目安になる | 上がるのも下がるのも遅れる。発症早期は低い。感染以外でも上がる |
| プロカルシトニン | 細菌感染でより上がりやすい | これだけで抗菌薬の要否を決められない。腎機能や手術後で修飾される |
| 乳酸 | 組織灌流の指標。重症度の評価に使う | 感染の有無やフォーカスは分からない |
画像も同じで、どこを見たいかが決まってから撮ります。全身を漠然と撮る前に、身体所見で当たりをつけてください。
| 検査 | 向くもの | 注意 |
|---|---|---|
| 胸部X線 | 肺炎、胸水の当たりをつける | 早期や脱水では写らないことがある。陰性は否定にならない |
| 腹部エコー | 胆嚢、胆管拡張、水腎 | ガスと体型に左右される。術者によって差が出る |
| 造影CT | 膿瘍の検出、腹腔内・後腹膜、フォーカス不明の全身検索 | 腎機能とアレルギー。膿瘍は造影しないと見つけにくい |
| 心エコー | 感染性心内膜炎の疣贅 | 経胸壁で陰性でも否定できない。疑いが強ければ経食道を考える |
| MRI | 化膿性脊椎炎、硬膜外膿瘍、骨髄炎 | 撮るまでに時間がかかる。疑ったら早く動く |
全身を診て、培養を採って、それでも分からないことはあります。そのときは順序を決めて詰めます。
| やること | |
|---|---|
| 1 | 病歴を取り直す。渡航、動物との接触、生ものや井戸水、職業、性交渉、歯科処置、手術歴、内服薬 |
| 2 | もう一度、全身を診る。時間が経って所見が出てくることは多い |
| 3 | 血管内デバイスを疑う。点滴、ポート、透析シャント、ペースメーカー |
| 4 | 薬剤熱を疑う。被疑薬を止めて反応を見る |
| 5 | 造影CT、心エコー、必要ならMRI |
| 6 | 感染以外を考え直す(第1章の表に戻る) |
この報告を受けて、何を考え、何をしますか。