5つのリスク因子を数える/前回の培養結果という確かな根拠/緑膿菌・ESBL・MRSAをどこまでカバーするか。
次の5つを聞き、診て、カルテで確かめます。問診で全部そろう項目ではありません。前回の入院記録や施設からの情報提供書を開く必要があります。
| 因子 | 確かめ方 | なぜ効くか |
|---|---|---|
| 90日以内の抗菌薬曝露 | お薬手帳、前回入院の記録、施設の記録 | 使った薬に耐える菌が生き残っている |
| 施設入所 | どこから来たか。入所期間 | 耐性菌が持ち込まれ、共有されやすい環境 |
| 透析 | 維持透析か。シャントかカテーテルか | 血管内デバイスと医療環境への頻回の曝露 |
| デバイス | 尿道カテーテル、点滴、ポート、胃瘻、気管切開 | バイオフィルムを作り、耐性菌の住処になる |
| 免疫抑制 | ステロイド、免疫抑制薬、化学療法、好中球減少 | ふつうは悪さをしない菌が起因菌になる |
因子が0個なら、ふつうの市中の菌を想定します。因子が積み重なるほど、想定を広げる方向に動きます。ただし因子の数だけで薬が決まるわけではありません。次の節から、菌ごとに判断します。
緑膿菌はリスク因子があればカバーします。判断材料は上のチェックリストに加えて、フォーカスごとの所見です。
| カバーを考える状況 | 補足 |
|---|---|
| チェックリストの因子が複数ある | 特に抗菌薬曝露・デバイス・免疫抑制 |
| 肺炎で画像上の気管支拡張 | 構造的な肺疾患は緑膿菌の温床。画像で気管支拡張を見たらカバーする |
| グラム染色で細長いグラム陰性桿菌 | 第5章の読み方。決定打ではないが後押しになる |
| 過去に緑膿菌が検出されている | 前回の培養結果。推定ではなく事実 |
| 重症・ショック | 外したときの代償が大きい場面では広めに始める |
ESBLはエンピリックにはカバーしません。ただし重症で、かつリスクがあればカバーします。
| 状況 | 方針 |
|---|---|
| 軽症〜中等症、リスクなし | カバーしない。培養結果で対応する |
| 軽症〜中等症、リスクあり | 原則カバーしない。培養を確実に採り、経過を密に見る |
| 重症・ショック、かつリスクあり | カバーする。外したときの代償が大きい |
| 過去にESBLが検出されている | 重症度にかかわらず考慮する。前回の結果は事実 |
ESBLのリスクとして重みがあるのは、過去のESBL検出、直近の抗菌薬曝露、施設入所、繰り返す尿路感染です。
本シリーズでは、MRSAを最初からカバーする方針は採りません。研修医が最初に身につけるべきは、広げる判断より広げない判断だからです。
| 方針 | |
|---|---|
| 初期治療 | MRSAはカバーしないのが既定 |
| 培養でMRSAが出た | そこで薬を変える。それで間に合う場面がほとんど |
| 迷う状況 | 上級医に相談する。1人で広げる判断をしない |
リスクがあるから広く始める、という判断は正当です。問題は、広げたまま終わることです。
| 広げるときに同時にやること |
|---|
| 培養を採ってあることを確認する。採っていなければ狭める根拠が永久に得られない |
| いつ見直すかを決める(培養結果が出る頃) |
| 何が分かれば狭めるのかを、カルテに書いておく |
耐性のリスクを評価してください。