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リファレンス

フォーカス別リファレンス

フォーカスが決まったあとに開くページ。薬剤名は代表例であり、第一選択の断定ではありません。

このページはフォーカスから引くもの薬から引くときは抗菌薬リファレンスを開いてください
このページの使い方
フォーカスが決まってから開いてください。熱の原因が分からないうちにこのページを開くと、当てはまりそうな疾患を探す作業になります。それは診断ではありません(第2章・第3章)。
例外が2つあります。「入院患者が新しく熱を出したとき」と「結核を疑うとき」は、フォーカスを探す側の話です。前者は当たる場所がだいたい決まっているため、後者は診断より先に隔離が要るためです。
各項目は同じ並びで書いてあります。
項目中身
よくある起因菌その臓器で実際に多いもの。ここから必要なカバー範囲が決まる
分けて考える同じ臓器でも別物として扱うもの。ここを混ぜると外す
初期治療の代表例断定ではありません。施設の採用薬とアンチバイオグラムが優先
落とし穴その疾患で繰り返し起きる外し方
治療期間はここに書いていません
期間は第9章まとめ早見表に一本化しています。同じ数値を2か所に置くと、必ず片方が古くなるからです。
咽頭炎
成人の咽頭炎の多くはウイルス性で、抗菌薬は要りません。とくに咳・鼻汁・嗄声など、咽頭以外の症状を伴うときはウイルス性らしいと考えます。細菌性は成人の一部で、その多くがA群溶血性レンサ球菌です。
中身
よくある起因菌ウイルスが大半。細菌ではA群溶血性レンサ球菌
初期治療の代表例アモキシシリン。ペニシリンアレルギーならセファレキシンやクリンダマイシン
落とし穴キノロンや広域セフェムを使う意義はありません。マクロライドも耐性が増えていて選びません
検査と治療の要否を点数で決める
「喉が赤いから抗菌薬」ではありません。下の点数で、迅速検査をするかどうかを決めます。
項目
38℃以上の発熱+1
咳がない+1
前頸部リンパ節の腫脹と圧痛+1
扁桃の腫大・浸出物+1
年齢(3〜14歳/15〜44歳/45歳以上)+1/0/−1
2点以上で迅速抗原検査を行い、陽性なら治療します。陰性でも点数が高いときは、偽陰性やほかのレンサ球菌の可能性を考えて治療を検討します。
点数が低いなら、検査も抗菌薬も要りません。
伝染性単核球症にアモキシシリンを出さない
EBウイルスによる伝染性単核球症は、レンサ球菌性咽頭炎とよく似ています。そこにアモキシシリンを出すと高い確率で皮疹が出ます
頸部リンパ節が広く腫れている、肝脾腫がある、若年、倦怠感が強い、異型リンパ球といった手がかりを、処方の前に確認してください。
咽頭痛で見逃してはいけないもの
所見の割に痛みが強い、唾が飲み込めない、開口障害、含み声、呼吸が苦しい、首が腫れている。このときは咽頭炎で片づけません。急性喉頭蓋炎、扁桃周囲膿瘍、深頸部膿瘍を考え、気道の確保を優先して耳鼻科へ相談してください。
治療の目的のひとつは扁桃周囲膿瘍のような化膿性の合併症を防ぐことです。
肺炎
その浸潤影は本当に肺炎か
発熱と浸潤影がそろっても、肺炎とは限りません。心不全、無気肺、薬剤性、器質化肺炎、悪性腫瘍でも同じように見えます。肺炎でなくても炎症反応は上がります。
そして炎症反応や白血球数、浸潤影の大きさで重症度を判定しないでください。重症度は意識・呼吸・血圧・年齢で測ります(第7章)。
市中肺炎誤嚥性肺炎院内肺炎・人工呼吸器関連
よくある起因菌肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラクセラ、マイコプラズマ、クラミドフィラ、レジオネラ口腔内の常在菌(レンサ球菌、インフルエンザ桿菌、黄色ブドウ球菌、横隔膜より上の嫌気性菌)陰性桿菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌
初期治療の代表例重症度と非定型のカバーで決める。肺炎球菌を強く疑えばペニシリンG、それ以外はセフトリアキソン。非定型を疑えばアジスロマイシンセフトリアキソン。嫌気性菌を強く疑えばアンピシリン/スルバクタムやクリンダマイシン軽症かつ耐性リスクなしならセフトリアキソンアンピシリン/スルバクタム。重症・耐性リスクあり・染色で緑膿菌を疑えばタゾバクタム/ピペラシリンセフェピム
落とし穴非定型を外す。重症度を測らずに外来で帰す背景の嚥下障害を評価しない。肺炎を治しても繰り返す落ち着いていれば緑膿菌のカバーを外してよいことがある
市中肺炎で覚えておくこと
起因菌は肺炎球菌・インフルエンザ桿菌・モラクセラ・マイコプラズマ・クラミドフィラ・レジオネラの6つでおおむね説明がつきます。前の3つが細菌性、後ろの3つが非定型です。
グラム染色で肺炎球菌を捉えられたなら、ペニシリンGまで狭められます(第5章)。広い薬に替えるより確実です。
市中肺炎にカルバペネムとキノロンは通常使いません。とくにキノロンは結核の診断を覆い隠します。咳が続いて体重が落ちている患者にキノロンを出す前に、結核を考えてください。
喀痰が採れないときは高張食塩水で誘発します。粘り強く採ることが、あとで狭める根拠になります。
誤嚥は2つに分ける
誤嚥性肺臓炎誤嚥性肺炎
中身胃液などによる化学性の炎症口腔内の菌による感染
場面意識障害のある人の嘔吐直後。発熱と呼吸困難が急に出る嚥下障害のある人に起きた肺炎
やること吸引と呼吸の補助。抗菌薬の予防投与は要りません起因菌に合わせて抗菌薬
嘔吐したから抗菌薬、ではありません。臨床的に化学性肺臓炎を疑うなら、抗菌薬なしで経過を見てよい場面があります。
誤嚥性肺炎で狙うのは横隔膜より上の嫌気性菌です。下(腸管)まで届く必要はありません。上下の違いは抗菌薬リファレンスに一覧があります。
嫌気性菌を強く疑うのは、口腔内が不潔なときと膿性痰が著明なときです。
誤嚥性肺炎で本当に効くこと
抗菌薬より、口腔ケアと嚥下リハビリです。肺炎を治しても、嚥下が戻らなければ繰り返します。
胃瘻をつくっても誤嚥性肺炎は減りません。経管栄養と胃瘻造設で発症頻度に差はなく、静脈栄養に替えても誤嚥のリスクは変わりません。「誤嚥するから胃瘻」という説明は成り立ちません。
院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎
入院48時間以降に起きた肺炎が院内肺炎、挿管48〜72時間以降が人工呼吸器関連肺炎です。市中肺炎とは起因菌が違います。
内容
多剤耐性菌のリスク90日以内の点滴抗菌薬、今回の入院5日目以降、免疫抑制、施設入所や透析などの医療曝露
要らない検査肺炎球菌・レジオネラの尿中抗原、マイコプラズマやクラミジアの抗体は、ほとんどの場合不要(起因菌になることが稀)
薬を決める材料耐性リスク・重症度・喀痰のグラム染色。染色で緑膿菌を疑う細い陰性桿菌が優位なら緑膿菌を狙う
メロペネム軽症では第一選択にしません(第6章)
抗菌薬の前に採った適切な喀痰培養が陰性なら、肺炎以外を考えてください。
効果判定は48〜72時間後。炎症反応やレントゲンが正常化するまで治療を続ける必要はありません(第9章)。
非定型を疑う手がかり
非定型は、マイコプラズマ・クラミジア・オウム病・レジオネラの4つです。画像と症状だけで細菌性と区別することはできません。疑うのは病歴からです。
手がかり
マイコプラズマ若年に多いが全年齢で起こる。ゆっくり出てくる微熱と乾いた咳
クラミジアマイコプラズマと違い高齢者に多い。ゆっくりした気道症状
オウム病鳥との接触。高熱と強い頭痛。呼吸器症状が乏しいことがある
レジオネラ高熱と、下痢や嘔吐など消化器症状が強い。当初は呼吸器症状に乏しい。意識障害・頭痛。低ナトリウム血症、CK上昇、肝逸脱酵素の上昇。温泉や循環式浴槽、冷却塔
レジオネラの尿中抗原は、特定の血清群しか拾いません。陰性でも否定できないので、疑うなら治療します。効く薬を使っていても2〜3日は悪化しうることも知っておいてください(第9章)。
培養は通常の培地では発育しないので、レジオネラを疑っていることを検査室に伝えます
画像で気管支拡張を見たら
気管支拡張症・慢性の構造的肺疾患・気管切開では、市中発症でも緑膿菌を考えます(第6章)。市中肺炎という言葉に引きずられて狭い薬で始めると外します。画像は自分で見てください。
結核を疑うとき
疑った時点で動きます診断がつく前に、患者と周囲を守る手当てが要ります
結核は「疑えたかどうか」で結果が変わります。疑わずに一般病床で数日過ごすと、同室者と職員が曝露します。診断より先に隔離という順序になるのは、この病気の特徴です。
疑う5つの状況
状況
12〜3週間以上続く咳に、発熱・寝汗・血痰・体重減少のいずれかを伴う
2結核のリスクが高い患者で、原因の分からない呼吸器症状が2〜3週間以上続く
3HIV感染者に、原因のはっきりしない咳と発熱がある
4リスクの高い患者が市中肺炎と診断され、7日以内に改善しない
5リスクの高い患者に、偶然、結核らしい胸部画像の異常が見つかった(症状は問わない)
肺結核の症状は、咳・体重減少・倦怠感・発熱・寝汗が多く、血痰はむしろ少数です。血痰がないことは否定の根拠になりません。
画像では上葉やS6の陰影(空洞を伴うことがある)が手がかりです。
リスクは、最近の曝露、HIV、糖尿病、慢性腎不全、ステロイドや免疫抑制薬、悪性腫瘍、高蔓延国の出身や渡航など。
疑ったらすぐやること
空気感染の予防策を始めます。患者にサージカルマスク、対応する側はN95、そして陰圧の個室へ。陰圧室がなければ、個室を閉め切って対応します。
「培養が出てから」では遅すぎます。疑った時点で始め、否定できたら解除する、という順序です。
喀痰は3回、時間をあけて
3回の喀痰で抗酸菌の塗抹・培養・遺伝子検査を出します(遺伝子検査は1回で足ります)。8〜24時間あけて採り、1回は早朝の痰にします。出ないときは高張食塩水で誘発します。
塗抹が3回とも陰性でも、肺結核は否定できません。ただし人にうつす力は十分低いと判断でき、予防策の解除の根拠になります。この違いは大事です。
インターフェロンγ遊離試験で除外しない
この検査は、活動性の結核と潜在性の感染を区別できません。陽性でも、いま発病しているという意味にはなりません。
そして活動性結核での感度は十分ではないので、陰性でも除外できません。ツベルクリン反応も同じです。目の前の患者を除外する道具として使わないでください。
キノロンは結核に効いてしまいます。市中肺炎にキノロンを出すと、一時的に改善して診断が遅れます(第8章・抗菌薬リファレンス)。咳が長い患者にキノロンを出す前に、結核を考えてください。
尿路感染
「尿路感染」でひとまとめにすると外します。どこの感染かで、届く薬も期間も変わります。
分けて考える考え方
膀胱炎発熱しません。熱があるなら膀胱炎ではありません
腎盂腎炎発熱、悪寒戦慄、側腹部痛、叩打痛。血液培養を2セット採る
前立腺炎(男性)移行する薬でなければ届きません。経口はキノロンかST合剤
カテーテル関連カテーテルの交換・抜去を検討する。薬だけでは終わらない
中身
よくある起因菌大腸菌が中心。クレブシエラ、プロテウス。カテーテル関連や解剖学的異常があれば腸球菌や緑膿菌も
初期治療の代表例市中発症の腎盂腎炎はセフトリアキソンやセフォチアム。院内発症は尿のグラム染色で分ける(やや細めの陰性桿菌なら緑膿菌を考えてセフタジジム、ふつうの陰性桿菌ならセフトリアキソン、AmpCを疑うならセフェピム)
落とし穴男性で前立腺を分けない。閉塞(結石・水腎症)を探さない。ESBLをリスクだけで広げる(第6章)
膿尿と細菌尿の読み方
読み方
膿尿尿沈渣で白血球が増えている。感度が高いので、膿尿がなければ尿路感染らしくありません。ただし好中球減少と尿路閉塞では膿尿が出ないことがあります
膿尿の特異度低い。尿道炎、尿路結石、腸腰筋膿瘍でも出ます。膿尿があるから尿路感染、とはなりません
細菌尿グラム染色で1視野に1個見えれば十分な菌量。菌が見えなくても尿路感染は否定できません
腸球菌・連鎖球菌尿から出ても解剖学的な異常がなければ、通常は原因菌になりません
尿培養が陽性でも感染とは限りません
無症候性細菌尿は、原則として治療しません。女性・高齢者・糖尿病ではしばしば認めます。尿が濁っている、臭う、というだけで抗菌薬が始まりがちです。発熱の原因が本当にそこかを、他のフォーカスを探してから決めてください(第2章・第3章)。
治療の対象になる例外は、妊婦と、泌尿器科の観血的処置の前です。
腎盂腎炎で画像を撮るタイミング
初診時に必ず撮る必要はありません。撮るのは治療を始めて3〜4日たっても発熱が続くとき、全身状態が悪いとき、採り直した血液培養がまだ陽性のときです。そこで尿路の閉塞・腎膿瘍・腎周囲膿瘍を探します。
閉塞があれば薬では治りません。ドレナージの適応を泌尿器科と相談してください(第7章)。
男性の尿路感染は、それ自体が所見です
男性は解剖学的に尿路感染が起こりにくいので、起きたときは背景に前立腺肥大・尿路結石・悪性腫瘍・カテーテルなどの異常がないかを必ず探します。「尿路感染でした」で終わらせない。
膀胱炎でも、男性に短期間の治療は勧められません。
急性前立腺炎は、平常時は薬が移行しにくい臓器ですが、急性期は炎症のため移行がよく、多くの抗菌薬が届きます。ただし直腸診は菌血症を起こしうるので、必要以上に繰り返さないこと
腹腔内・胆道
中身
よくある起因菌陰性桿菌、腸球菌(E. faecalis が多い)横隔膜より下の嫌気性菌(バクテロイデス)
分けて考える市中発症か院内発症か。抗菌薬の曝露歴があるか。重症度
初期治療の代表例軽症で市中発症ならアンピシリン/スルバクタム、またはセフトリアキソン+メトロニダゾール。院内発症や曝露歴があればセフェピム+メトロニダゾールタゾバクタム/ピペラシリン
落とし穴閉塞があれば薬では治りません。ドレナージが優先(第7章)
セフェム単剤にするとき
セフトリアキソン・セフェピムには嫌気性菌のカバーがありません。セフェム系で横隔膜より下まで届くのはセファマイシン系(セフメタゾール)だけです。
腸球菌も抜けます。培養で「腸球菌」と出たら E. faecalis か E. faecium かを確認してください(抗菌薬リファレンス)。
皮膚軟部組織
まず壊死性軟部組織感染を否定する
数時間から数日で進み、外科的なデブリドマンが遅れると助かりません。抗菌薬だけでは治らない病態です。初期に疑う所見は次の4つ。
所見
1皮膚所見と不釣り合いに強い痛み(初期には皮膚所見がないことさえある)
2皮膚所見の範囲を超えて広がる圧痛
3全身状態が悪い(意識障害・頻脈・血圧低下・頻呼吸)。蜂窩織炎ではショックになりません
4急速に拡大する皮膚所見
水疱・皮膚壊死・握雪感は、進行してから出る所見です。初期にこれらがないことは否定の根拠になりません。
診断は臨床です。画像のために治療が遅れてはいけません。ガスや液体貯留がなくても否定できません。疑ったら外科と感染症科へ緊急で相談してください(会陰部なら泌尿器科も)。
中身
よくある起因菌レンサ球菌と、メチシリン感受性の黄色ブドウ球菌(MSSA)が中心
リスク皮膚バリアの破綻(外傷・褥瘡・虫刺され・アトピー)、浮腫(リンパ浮腫・静脈うっ滞)、肥満、糖尿病、足白癬
初期治療の代表例合併症のない蜂窩織炎はセファゾリン(経口ならセファレキシン)。3世代セフェムは要りません
落とし穴抗菌薬だけで終わらせる。下肢の挙上と、足白癬の治療まで含めて再発を防ぐ
培養の採り方で差がつく
皮膚のスワブ培養は採りません。常在菌を拾うだけで、治療の役に立ちません。
皮下膿瘍があれば切開排膿し、膿を注射器で吸って提出します(綿棒ではなく)。
血液培養は陽性率が高くありませんが、採る価値があります。重症度の判断になり、蜂窩織炎だと思っていたら別の感染が見つかることがあるからです。
蜂窩織炎に見えて違うもの
片側性でないときは、まず疑ってください。感染では、壊死性軟部組織感染、化膿性関節炎・滑液包炎、骨髄炎、丹毒、帯状疱疹。感染でないものとしては、うっ滞性皮膚炎、接触皮膚炎、痛風、薬疹、血管炎、虫刺され、深部静脈血栓症
両下肢の発赤は、うっ滞性皮膚炎のことがよくあります。抗菌薬を足す前に、ここを一度考えてください。
背景で起因菌が変わる
皮膚軟部組織だから狭くてよい、と決め打ちしないでください。
背景足したいもの
糖尿病性足感染(深い・慢性・虚血)陰性桿菌と嫌気性菌。複雑症例では緑膿菌も。アンピシリン/スルバクタムが使いやすい
咬傷(イヌ・ネコ・ヒト)口腔内の常在菌(パスツレラ、エイケネラなど)。アンピシリン/スルバクタム破傷風の予防接種歴も確認する
水への曝露(海水・淡水)ビブリオ、エロモナス。肝硬変では劇症化する
好中球減少・免疫抑制緑膿菌を含む陰性桿菌
壊死性軟部組織感染、会陰部、褥瘡陰性桿菌と嫌気性菌の混合。外科的処置が優先
陰性桿菌のカバーが要ると判断した場面でも、答えが3世代セフェム単剤になるとは限りません。
カテーテル関連血流感染
血管内カテーテルが入っている患者が発熱したら、まずこれを疑います。刺入部が腫れていないから違う、とは言えません(刺入部の所見は特異度は高いが、感度が低い)。
中身
よくある起因菌ブドウ球菌(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌)が大半。陰性桿菌、カンジダ
まずやること血液培養2セット。カテーテルを抜くかどうかを決める。抜いたら先端を切って培養へ出す(血液培養も必ず一緒に)
初期治療の代表例ブドウ球菌が多いのでバンコマイシンから。重症や鼠径部留置なら陰性桿菌やカンジダのカバーも検討する
落とし穴抜かずに薬だけで押し切る。バイオフィルムの中の菌は薬では死にません(第8章)
MSSA と分かったら、すぐ狭める
感受性が出てメチシリン感受性(MSSA)と分かったら、バンコマイシンからセファゾリンへ速やかに変更します。バンコマイシンを続けるより生命予後がよいことが示されています。
狭めることが、そのまま治療の質になる典型例です(第9章)。
黄色ブドウ球菌が出たら止まって考える
血液培養から黄色ブドウ球菌が出たら、それ自体が重大な所見です。
転移巣を探す(心内膜炎、椎体炎、腸腰筋膿瘍、関節)
心エコーを行う
血液培養を採り直して陰性化を確認する。治療期間は陰性化した日から数えます
カテーテルを抜いて適切な抗菌薬を入れても菌血症や発熱が続くなら、心内膜炎を探します
・治療は点滴で長くなります。元気そうでも内服には落としません(第8章の症例)
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌は汚染菌のことが多いので、真の感染かの判断が先です(第3章)。
カンジダが出たときは扱いが違う
カテーテルは必ず抜きます。そして眼科に依頼して眼内炎を探します。眼内炎があれば治療が長くなり、見落とすと視力を失います。この場面は感染症科に相談してください。
入れるときと、毎日の判断で決まります。中心静脈カテーテルは手術と同じ装備(帽子・マスク・滅菌ガウン・滅菌手袋・大型のドレープ)で挿入する。鼠径部は感染と血栓のリスクが高いので原則として選ばない。末梢挿入型のほうが感染率は低い。ルーメン数は少なく。そして毎日、抜けないかを検討する
感染性心内膜炎
この病気は、疑えるかどうかで決まります。発熱と心雑音が典型ですが、倦怠感や体重減少だけのこともあります。原因のはっきりしない発熱が続く患者では、一度は考えてください(第1章)。
中身
分けて考える自己弁人工弁(手術からの期間で起因菌が変わる)/医療関連(カテーテル、透析)
よくある起因菌緑色レンサ球菌、黄色ブドウ球菌、腸球菌。人工弁の早期ではコアグラーゼ陰性ブドウ球菌。まれに HACEK
まずやること抗菌薬の前に血液培養を採る。時間を空けて複数セット
落とし穴培養陰性心内膜炎のいちばんの原因は、培養を採る前に抗菌薬を使ってしまうこと
経胸壁エコーで疣贅がなくても否定できません
経胸壁心エコーの感度は十分ではありません。経食道心エコーのほうが感度・特異度とも高く、疑ったら経食道まで進みます
「エコーで何もなかったので違うと思います」という報告は、この病気では根拠になりません。
診断基準の使いどころ
血液培養と心エコーの2つが柱で、そこに血管や免疫の所見が加わる、という構造です。
中身
大項目典型的な起因菌が別々に採った血液培養から検出される/持続的に陽性/心エコーで疣贅・膿瘍・人工弁の部分的な離開/新しい弁逆流
小項目素因(弁膜症、先天性心疾患、静脈注射薬の使用)/発熱/血管の所見(塞栓、敗血症性肺塞栓、感染性動脈瘤、頭蓋内出血、眼瞼結膜出血)/免疫の所見(糸球体腎炎、リウマトイド因子)/大項目を満たさない培養所見
基準を満たすために、まず血液培養です。採る前に抗菌薬を入れると、あとから基準を満たせなくなります。
手術が要る場面があります。薬で治らない心不全、切除できる感染巣による持続する菌血症、弁輪や心筋の膿瘍、繰り返す塞栓、真菌によるもの。内科だけで抱えないでください。
治療の組み立ては感染症科と循環器に相談する場面です。
骨・関節
中身
よくある起因菌黄色ブドウ球菌が中心。人工物があればコアグラーゼ陰性ブドウ球菌も
分けて考える化膿性関節炎/化膿性脊椎炎/人工関節感染/糖尿病性足からの骨髄炎
初期治療の代表例培養を採ってから始める。可能なら関節液や骨の培養。感受性が出たら狭める
落とし穴移行が悪く、治療が長期になります。早期に内服へ落とすと再燃する。人工物は抜去・交換の検討が要る
化膿性関節炎は時間の勝負です。関節穿刺と洗浄が要る病態で、抗菌薬だけでは関節が壊れます。整形外科へ早く相談してください。
髄膜炎
細菌性髄膜炎は内科の緊急です来院から1時間以内に抗菌薬を入れることを目標にしてください
中身
よくある起因菌肺炎球菌、髄膜炎菌。高齢者・免疫抑制ではリステリア
初期治療の代表例髄液移行のある薬を、髄膜炎量で。セフトリアキソン+バンコマイシン。リステリアを考えるならアンピシリンを足す(セフェム系はリステリアに効きません)
落とし穴開始を遅らせないこと。画像や腰椎穿刺を待って抗菌薬が遅れるのが最大の失敗
疑うのが難しい病気です
発熱・項部硬直・意識障害の三徴がそろうのは4割ほどしかありません。そろうのを待っていると遅れます。
腰椎穿刺をしようかな、と頭をよぎったときが、腰椎穿刺をするときです。閾値は低めに。穿刺なしに髄膜炎を確定も除外もできません。
穿刺の前にCTを撮るかどうか
全員にルーチンで撮る必要はありません。撮ってから、では抗菌薬が遅れます。
先にCTを撮るのは、意識障害、けいれん、神経学的な巣症状、乳頭浮腫、脳内の腫瘤や出血の既往、免疫抑制があるときです。
血液培養は短時間で採れます。髄液培養はできるかぎり抗菌薬の前に採りますが、抗菌薬のあとでもあきらめずに採ってください
ステロイドは抗菌薬より先か、同時に
細菌性髄膜炎と判断したら、デキサメタゾンを抗菌薬の直前、または同時に始めます(0.15mg/kgを6時間おきに4日間)。抗菌薬だけより死亡率が下がります。
抗菌薬を入れたあとから足しても効果は期待できません。順番が効果を決めます。
なおデキサメタゾンを使うとバンコマイシンの髄液移行が落ちるので、経過を注意して見てください。
髄液の読み方
髄液糖と血糖の比が 0.4 以下は特異度が高い所見です。髄液を出すときは血糖も一緒に測ってください。比が出せなければ、この所見は使えません。
初圧や多核球の数は参考にはなりますが、それだけで決められません。
量が足りないという外し方
移行する薬を選んでも、通常量では濃度が足りません。髄膜炎量で投与します(第8章)。「届く薬を選んだから大丈夫」で外すのがこの疾患です。
感受性が出たら狭めます。途中で経口に替えてはいけません。
髄膜炎菌を疑うとき、または原因が分からないときは、飛沫予防で個室にします。濃厚に曝露した家族や医療従事者には予防内服が要ります。
髄液圧が高くない、重症感がない、単核球優位。それでも結核・リステリア・クリプトコッカスは忘れないでください。
急性下痢症
急性下痢症の多くは自然に治り、検査も抗菌薬も要りません。この項の目的は、その中から検査と治療が要る人を選び分けることです。
中身
分けて考える小腸型(大量の水様便、発熱と腹痛は軽い)/大腸型(少量頻回の粘血便、腹痛と発熱を伴う)
よくある起因菌ウイルスと毒素が多い。細菌ではカンピロバクター、非チフス性サルモネラ、病原性大腸菌
治療の基本脱水の補正。塩分と糖分を含む経口補水を基本にし、飲めなければ点滴。絶食にしない
落とし穴反射的に抗菌薬を出す。止痢薬を安易に使う。薬剤性を考えない
問診で決まります
聞くこと意味
渡航歴旅行者下痢症。発熱があればマラリアも鑑別に入れる
免疫不全ふつうは考えない病原体が入ってくる
抗菌薬の使用歴クロストリジオイデス・ディフィシル感染症を想起する(下の項)
食事歴と発症までの時間1週間前まで遡って聞く。毒素型は数時間で発症する
薬剤歴感染でない下痢のいちばん多い原因は薬です。下剤、制酸薬、経管栄養、抗癌剤など
既往炎症性腸疾患の再燃、甲状腺機能亢進、副腎不全
悪心と嘔吐が下痢より強いなら、ウイルス性かあらかじめできていた毒素による食中毒らしくなります。
便培養を出すかどうか
全員に出すものではありません。陽性率は高くありません。出すのは次のような場面です。
便培養を検討する場面
免疫不全
大腸型(高熱、少量頻回の下痢、血便)
小腸型でも脱水をきたす大量の下痢、または腸炎の危険地域への渡航歴
炎症性腸疾患の患者(原疾患の再燃との鑑別)
集団発生が疑われる、食品を扱う職業
想定する菌を検査室に伝えてください。菌によって培地が変わります。
入院3日目以降に起きた下痢で、ふつうの腸炎の起因菌が培養されることはほとんどありません。そこは薬剤性やクロストリジオイデス・ディフィシルを考える場面です。
全身症状が強ければ血液培養も採ります(カンピロバクターやサルモネラは菌血症を起こします)。
血便に抗菌薬を出す前に
血ばかりで便がない、という下痢では腸管出血性大腸菌を考えます。高熱が出ないことも特徴です。この病態を疑うときは抗菌薬を投与しません。ベロ毒素の検査を出してください。
止痢薬も、発熱や血便があるときは使いません。
7日を超える下痢は、急性下痢症の枠から外して考えます。寄生虫や炎症性腸疾患の検索へ切り替えてください。
クロストリジオイデス・ディフィシル感染症
これは抗菌薬を使ったあとに起きる感染症です。広げた代償が、目の前の患者に返ってくる形でもあります(第6章)。
入院してから起きた下痢の大半は、薬剤や経管栄養など感染以外が原因です。そのうえで、一定の割合がこの感染症です。
中身
疑う場面抗菌薬の使用中・使用後の下痢(1日3行以上が目安)、腹痛、発熱、白血球増加。入院患者で説明のつかない白血球増加を見たときも鑑別に挙げる
関連の強い薬キノロン、クリンダマイシン、広域ペニシリン、広域セフェム。ただし実質どの抗菌薬でもきっかけになります
その他のリスク高齢、長期入院、消化管手術、プロトンポンプ阻害薬、抗癌剤、炎症性腸疾患
まずやること原因になっている抗菌薬を止められないかを検討する。それだけで改善することも多い
治療の代表例経口バンコマイシンやメトロニダゾール。腸管の中を狙うので点滴では届きません
落とし穴止痢薬を使わない。再発が多い。手指衛生は石けんと流水(芽胞にアルコールは効きません)
検査の出し方と読み方
下痢がなければ検査しません。形のある便を検査すると、保菌を拾うだけになります。そして便検査は繰り返しません。
検査性質
CDトキシン特異度が高い。陽性なら診断してよい。感度が低いので陰性でも否定できない
GDH感度が高い。陰性ならおおむね否定できる。毒素を作らない株でも陽性になるので特異度は低い
組み合わせ解釈
GDH(−)/トキシン(−)否定的
GDH(+)/トキシン(+)この感染症と診断する
GDH(+)/トキシン(−)判断を保留する場面。毒素を作らない株か、トキシン検査の偽陰性か。培養を追加して確認する
効果判定にトキシン検査を使わない
治ったかどうかは症状で判断します。トキシンは治療後も陰性化しないことが多く、判定に使えません。陰性を確認するために採り直す、ということをしないでください。
再発は珍しくありませんが、耐性ができて再発するわけではありません。再発したときの組み立ては、感染症科と相談してください。
重症や劇症では外科的な判断が要ります。ショック、イレウス、腸管穿孔、中毒性巨大結腸症があれば致死率が高く、支持療法と併用療法に加えて外科へ相談してください。
経口と点滴で用途がまったく違う
バンコマイシンの内服は腸管から吸収されません。だからこの病気に使えて、MRSAの感染症には使えません。逆に点滴のバンコマイシンはこの病気に効きません。同じ名前の薬で、狙っている場所が違います抗菌薬リファレンス)。
発熱性好中球減少症
これも内科の緊急です培養を採ったら、緑膿菌に効く薬をできるだけ早く始めてください
好中球が減っている患者の発熱、という「状態の名前」であって、診断名ではありません。だから、これで止まらずにフォーカスを探し続けます。ただし探し終わるまで抗菌薬を待ちません
中身
定義好中球が500/µL 未満、または48時間以内にそうなると予想される状態での発熱
よくある起因菌コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、緑色レンサ球菌/大腸菌などの陰性桿菌、緑膿菌真菌が最初から原因になることは稀
好発部位腸管、肺、皮膚。ほかにカテーテル、口腔内、副鼻腔、肛門の周囲
初期治療の代表例セフェピムまたはタゾバクタム/ピペラシリンの単剤。過去に耐性菌が出ていればそれに合わせる
落とし穴フォーカスが分からないから待つ。待っている間に緑膿菌で急変します
所見が出ないことが所見です
炎症を起こす好中球がいないので、赤くならず、膿もたまらず、画像にも出にくいという状態です。ふだんの目印が使えません。
だから毎日、丁寧に診察します。皮膚、カテーテルの刺入部、口腔内(歯周も)、消化管、肺と副鼻腔、陰部と肛門の周囲。経過の途中でフォーカスが見えてくることがあります(第2章)。
直腸診はしません。腸管の菌を血流に押し込む危険があります。肛門の周囲は見ることと、圧痛を確かめることにとどめます。
広げる/広げないの判断
状況足すもの
好中球減少性腸炎や肛門周囲膿瘍を疑う嫌気性菌のカバー(タゾバクタム/ピペラシリン、またはメトロニダゾールの併用)
ショック、緑膿菌感染が疑わしい、多剤耐性菌が疑わしいアミノグリコシドやキノロンの併用を考える
皮膚軟部組織感染・カテーテル関連血流感染・肺炎を疑う、血行動態が不安定、血液培養で陽性球菌、MRSA保菌バンコマイシン
初期治療に抗MRSA薬をルーチンで足す必要はありません。上のような理由があるときだけです(第6章)。
解熱しなくても、すぐには薬を変えない
正しい抗菌薬を使っていても、解熱までに数日かかります。全身状態とバイタルが安定していれば、薬を替えずに注意深く見ます。発熱が続くなら血液培養を繰り返し採ります
抗菌薬を替えることは、耐性菌を選ぶことでもあります(第9章)。
数日から1週間続くときは、真菌を考える場面です。血液培養で酵母様真菌が出たら、カンジダ血症として眼内炎の検索(眼科)まで行います。
つつが虫病・日本紅斑熱
症状が非特異的なので、まず疑えるかどうかがすべてです。手がかりは皮疹・季節・曝露歴・住んでいる地域。発熱、倦怠感、頭痛、全身痛で受診し、そのままでは風邪にも見えます。
発熱・皮疹・刺し口が三徴
刺し口は、患者自身が気づいていないことがほとんどです。訴えを待たず、こちらから探します。
見落としやすいのは、腋窩・膝窩・臍・陰部・頭部・腕時計の下・下着の当たるところ全身の皮膚を見てください。
皮疹は表皮に変化がなく、痛みも痒みもなく、触れると浸潤があるのが特徴です。大腿は観察しやすい部位です。
つつが虫病日本紅斑熱
媒介ツツガムシの幼虫マダニ
時期秋から冬春から秋
皮疹個疹が大きめ。体幹で目立つ個疹が小さめ。手掌・足底を含む四肢で目立つ。紫斑になることも
刺し口大きめ小さめ
リンパ節刺し口に近い所属リンパ節が腫れる目立たない
第一選択テトラサイクリン系(ドキシサイクリン、ミノサイクリン)
第二選択アジスロマイシン。キノロンは効きませんキノロン
検査結果を待たずに治療する
治療が遅れると重症化します。臨床的に疑ったら、検査の結果を待たずに始めてください。大半は2〜3日で解熱します。改善しないときは、診断そのものを考え直します。
確定はペア血清の抗体で、急性期と2週間ほど後の2回が要ります。急性期の血清・全血・痂皮を最初に保存しておくこと。あとから採り直せません。
血液検査では血小板減少、肝逸脱酵素の上昇、低ナトリウム血症が参考になりますが、特異的ではありません。
野山に入ったか(仕事・畑・散歩)を必ず聞いてください。流行地では、そこに住んでいること自体がリスクになります。刺された自覚がある人は多くありません。
入院患者が新しく熱を出したとき
これはフォーカスを探す側の話です(第2章・第3章)。ただ、入院中の発熱は当たる場所がだいたい決まっているので、ここに置いておきます。
まず、いま動くかどうかを決める
意識・呼吸数・血圧を見ます(第7章)。2項目以上が引っかかれば敗血症を疑い、緊急で動きます
逆にバイタルが安定していて全身状態がよければ、経験的に抗菌薬を始める前に、診断をつけることを優先します。熱が出たから抗菌薬、ではありません。
まず考えるもの
感染性肺炎、腎盂腎炎、血管内カテーテル関連感染、クロストリジオイデス・ディフィシル腸炎、手術部位感染の5つ
次に、経鼻胃管に伴う副鼻腔炎、胆管炎・胆嚢炎、感染性心内膜炎、関節炎、憩室炎、蜂窩織炎、褥瘡感染
感染でないもの偽痛風、深部静脈血栓症、薬剤性、静脈炎、血腫、中枢熱、腫瘍熱、副腎不全
診るところが決まっています
部位見るもの
頭頸部副鼻腔の叩打痛、中心静脈カテーテルの刺入部
胸部副雑音、心雑音
腹部圧痛、腹膜刺激徴候、マーフィー徴候
背部肋骨脊柱角の叩打痛、脊柱の叩打痛褥瘡
四肢ライン刺入部、関節の発赤・腫脹・可動域、下腿の浮腫と把握痛
皮膚皮疹
背中とお尻は、寝ている患者では見落とされます。体位を変えて見てください(第2章)。
基本の3点セット
血液培養2セット/尿検査と尿培養/胸部レントゲン。ここから始めて、病歴と所見で足していきます。
・肺炎を疑う → 質のよい喀痰を採る
・創部を疑う → 浸出液や膿を注射器で吸って提出(綿棒は不適切)
・下痢がある → クロストリジオイデス・ディフィシルの検査
・カテーテルを抜いた → 先端を培養へ
・髄膜炎、関節炎を疑う → 髄液、関節液
・深部静脈血栓症を疑う → 下肢の静脈エコー
培養を出したら、まずグラム染色を自分で見てください(第4章・第5章)。
初期治療は培養結果が出るまでの暫定です。出たら狭めます(第9章)。用量は腎機能に合わせますが、初回だけは腎機能によらず通常量です(第8章)。
予防投与
ここから先は治療ではありません。感染していない人に出すので、誰に出さないかを決めるほうが本体です。出す理由が言えないなら、出さない側に倒します。
歯科処置の前(感染性心内膜炎の予防)
全員に出すものではありません。対象は心内膜炎になったときの重症度が高い患者に限られます。
対象になる背景
人工弁、または弁の修復に人工材料を使っている
感染性心内膜炎の既往
先天性心疾患のうち、根治されていないチアノーゼ性人工物を用いた治療から6か月以内人工物の周囲に上皮化が済んでいない部位が残るもの
心移植を受けた患者で弁の異常があるもの
対象になる処置対象にならない処置
歯肉や歯根尖の周囲を扱う処置
口腔粘膜を破る処置
(歯石除去、抜歯など)
感染のない部位への歯科麻酔
歯科のレントゲン撮影
矯正器具や義歯の着脱、矯正器具の調整
乳歯の自然脱落
抜糸などの非観血的な処置
外傷による口唇や口腔粘膜からの出血
背景と処置の両方が当てはまるときだけ出します。代表例はアモキシシリンを処置の前に1回だけ内服(成人2g)。経口できないならアンピシリンの注射、ペニシリンアレルギーがあればセファレキシンやクリンダマイシンなどに替えます。
対象かどうかの判断は循環器と歯科で共有してください。研修医が単独で決める場面ではありません。
なお皮膚や呼吸器の処置、消化管・尿路の処置は、原則として心内膜炎の予防対象ではありません
手術の前(周術期予防)
狙うのは皮膚の常在菌なので、多くの手術でセファゾリンです。広い薬を選ぶ場面ではありません。
外しやすいところ内容
タイミング執刀前に投与を終えていること。切ってからでは遅い
手術中の追加手術が長い、出血が多いときは術中に追加する
いつまで続けるか術後に漫然と続けない。長く出すほど耐性菌と CD腸炎が増える
大腸の手術嫌気性菌のカバーが要る。セフメタゾールなど
ドレーンが入っているから続ける、という理由づけはしません。
脾臓を摘出した人、免疫抑制のある人、曝露後の予防は、それぞれ別の判断です。該当する患者を受け持ったら、その都度、上級医と確認してください。
どのフォーカスでも共通すること
内容
培養を先に採る採っていなければ、あとで狭める根拠が永久に得られない(第3章)
薬で治らないものを探す膿瘍・デバイス・閉塞。解熱しないときに薬を広げる前に確認する(第8章)
届くかどうか前立腺・髄液・骨関節・膿瘍の内部には届きにくい(第8章)
狭める計画広げた日に、いつ何をもって狭めるかを決めておく(第9章)
期間第9章まとめ早見表にまとめてある
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薬から引く
まとめ早見表
3つの軸と治療期間
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章の一覧
免責事項:本コンテンツは医療従事者の学習・参考を目的としたものであり、医療機器ではありません。記載の起因菌と薬剤は一般的な代表例であり、第一選択の断定ではありません。実際の選択は各施設のプロトコル、院内のアンチバイオグラム、および最新の添付文書に従ってください。診断・治療の最終判断は必ず担当医師が行ってください。