染色性・形・配列の3要素/代表的な組み合わせ/貪食像で起因菌と定着菌を分ける/狭めるための染色。
順に見ていきます。この順序を固定しておくと、迷いません。
| 見るもの | 選択肢 | |
|---|---|---|
| 染色性 | 紫か赤か | グラム陽性(紫)/グラム陰性(赤) |
| 形 | 丸いか細長いか | 球菌/桿菌 |
| 配列 | どう並んでいるか | ブドウ状/連鎖状/双(2つ組)/ばらばら |
この3つに加えて、大きさとそろい方も手がかりになります。同じグラム陰性桿菌でも、太くて短いものと、細長いものでは想定する菌が変わります。
研修医が出会う頻度の高いものに絞ります。ここで菌名を断定するのではなく、候補を絞るのが目的です。
| 見えるもの | 想定する菌 | よくある場面 |
|---|---|---|
| グラム陽性球菌・ブドウ状 | ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌/コアグラーゼ陰性) | 血流感染、皮膚軟部組織、デバイス |
| グラム陽性球菌・連鎖状 | レンサ球菌、腸球菌(E. faecalis / E. faecium) | 皮膚軟部組織、腹腔内、心内膜炎 |
| グラム陽性球菌・双球菌でランセット型 | 肺炎球菌 | 市中肺炎、髄膜炎 |
| グラム陰性桿菌・太く短い | 大腸菌、クレブシエラなどの陰性桿菌 | 尿路、胆道、腹腔内 |
| グラム陰性桿菌・細長い | 緑膿菌を考える(SPACE) | 院内、デバイス、気管支拡張症 |
| グラム陰性桿菌・小型で形が不ぞろい | インフルエンザ桿菌 | 気道感染、慢性肺疾患の増悪 |
| グラム陰性球菌・双球菌 | モラクセラ(気道)、淋菌・髄膜炎菌 | 気道感染、尿道炎、髄膜炎 |
| グラム陽性桿菌 | コリネバクテリウム(定着が多い)、リステリア、クロストリジウム | 多くは定着。血培で複数セット陽性なら考え直す |
| 酵母様真菌 | カンジダ | 喀痰では治療対象にしない。血液から出たら別 |
見えた菌が悪さをしているかどうかは、菌そのものではなく周囲との関係で判断します。
| 所見 | 起因菌らしい | 定着菌らしい |
|---|---|---|
| 白血球との関係 | 白血球に貪食されている | 白血球から離れている |
| 菌種の数 | 単一の菌が優勢 | 何種類も同じくらい見える |
| 付着先 | 白血球のそば | 扁平上皮に付着している |
| 量 | 視野内に多数 | 探してようやく見つかる |
| 検体の質 | Geckler 4・5群 | 1〜3群(唾液) |
例外もあります。好中球減少の患者では白血球がいないので貪食像は見えません。この場合は菌の量と単一性、そして臨床像で判断することになります。
グラム染色は、広げるためだけでなく狭めるためにも使えます。
| 見えたもの | 治療の動き |
|---|---|
| 肺炎でランセット型の双球菌が優勢 | 肺炎球菌を考える。広域から狭められる根拠になる |
| 血液からブドウ状グラム陽性球菌 | 黄色ブドウ球菌なら転移巣を探す。MRSAのリスクを評価する(第6章) |
| 細長いグラム陰性桿菌 | 緑膿菌を考える。リスク因子と照らしてカバーするか決める(第6章) |
| 複数の菌種が混在(質の良い検体で) | 誤嚥、腹腔内感染、壊死性軟部組織感染などもともと複数菌の病態を考える |
| 何も見えない | 否定にはならない。抗菌薬がすでに入っている、菌量が少ない、非定型病原体の可能性 |
治療を始めたあとにもう一度染めると、効いているかどうかが分かります。
| 治療後の再検で | 読み方 |
|---|---|
| 菌が減っている/消えている | 薬が届いて効いている |
| 貪食像が増えている | 免疫が処理できている |
| 菌量が変わらない | 薬が外れている、届いていない、膿がたまっている(第9章) |
| 別の菌が優勢になった | 菌交代を考える。検体の質も見直す |
この標本をどう読み、治療をどう動かしますか。