2軸を4象限に落とす(Nohria分類)/血圧で入口を決める(CS分類)/酸素とNPPV/そして「いつ循環器を呼ぶか」。
診断を詰めるのは後です。まず患者が今すぐ死ぬ状態かどうかを判断します。
第1章の2軸――うっ血(wet / dry)と灌流(warm / cold)――を組み合わせると、患者は必ず次の4つのどれかに入ります。
この4象限が強力なのは、治療の向きがそのまま決まるからです。うっ血があるなら引く(利尿・血管拡張)、灌流が足りないなら支える(強心薬・場合により輸液)。
Nohria 分類が「患者の型」を表すのに対し、CS(クリニカルシナリオ)分類は来院時の収縮期血圧で初期治療の入口を決めるための道具です。救急外来では、こちらのほうが早く動けます。
| CS | 収縮期血圧 | 病態 | 初期対応の軸 |
|---|---|---|---|
| CS1 | > 140 mmHg | 急激に発症。血管が締まって肺に水が移動した状態(volume shift)。全身の体液量はさほど増えていない | 血管拡張薬(硝酸薬)+ NPPV。利尿薬は控えめでよい |
| CS2 | 100 〜 140 mmHg | 数日かけて体液が貯まった。体重増加・浮腫を伴う(volume overload) | 利尿薬が主役。血管拡張薬を併用 |
| CS3 | < 100 mmHg | 低灌流が前面。心原性ショックに近い | うっ血がなければ慎重に輸液。強心薬を考慮し、循環器へ |
| CS4 | — | 急性冠症候群による心不全 | 再灌流療法が最優先。カテ室へ |
| CS5 | — | 右心不全が主体 | 前負荷を落としすぎない。利尿薬・硝酸薬は慎重に |
低酸素血症があれば酸素を投与します。目標は SpO₂ 94〜98%(CO₂ ナルコーシスのリスクがある慢性II型呼吸不全では 88〜92%)。
NPPV の設定・導入の実際・失敗の見極めについては、姉妹シリーズで詳しく扱っています。
酸素療法・人工呼吸器ノート 第5章NPPV の適応・設定・うまくいかないときの判断研修医にとって切実な問いです。次のいずれかがあれば、迷わず、早く相談してください。
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| 収縮期血圧 < 90 mmHg、または低灌流所見 (Nohria C・CS3) | 強心薬・機械的補助の判断が必要。利尿薬だけで粘ると悪化する |
| ST 上昇・新規の虚血性変化 (CS4) | 再灌流までの時間が予後を決める |
| NPPV で改善しない/挿管を要する呼吸不全 | 集中治療管理と原因への介入が必要 |
| 血行動態を崩す不整脈 持続性VT・高度徐脈・頻脈性心房細動 | 電気的治療・ペーシングの適応判断。心電図判読ノート 第4章 |
| 重症弁膜症・機械的合併症を疑う 新規の心雑音、急性MR、心破裂 | 外科的・カテーテル的治療の対象。薬では治らない |
| 初回発症の心不全で原因が不明 | 精査の方針決定 |