血圧が低い/腎機能が悪い/Kが高い――「教科書どおりに始められない患者」にどう対処するか。そして増悪時に薬を止めるべきか。
制約に直面したとき、多くの場合は薬をやめる前にできることが残っています。
4本柱のうち3剤(ARNI・β遮断薬・MRA)は血圧を下げます。収縮期血圧 90〜100 mmHg 台の患者は珍しくありません。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 無症状の低血圧 ふらつき・失神なし、臓器灌流も保たれる | そのまま継続してよい。数字だけで減らさない |
| 症状のある低血圧 | まず利尿薬と不要な降圧薬を減らす。それでも続くなら4本柱を減量(中止ではなく) |
| 低灌流を伴う 四肢冷感・乏尿・意識レベル低下 | Nohria C(第3章)。4本柱の調整以前に、循環の立て直しと循環器コンサルト |
ARNI・ACE阻害薬・ARB を始めると、Cre がある程度上がるのは想定内です。輸出細動脈を拡張して糸球体内圧を下げるため、見かけ上の濾過量が減るからです。
| 薬剤 | 腎機能との関係 |
|---|---|
| ARNI/ACE-I/ARB | 初期の Cre 上昇 30% 以内は許容し継続。それを超える、または高K血症を伴うなら減量・中止を検討 |
| MRA | eGFR > 30 が開始の目安。エプレレノンは eGFR 30〜50 で25mg 隔日開始・25mg/日を超えない |
| SGLT2阻害薬 | 開始直後に eGFR が一時的に低下することがあるが可逆的。長期的には腎保護的に働くため、この初期低下で中止しない |
| β遮断薬 | 腎機能による用量調整は基本的に不要 |
ARNI/ACE阻害薬/ARB と MRA はいずれも K を上げます。併用するので、高K血症は4本柱を揃えるうえで最大の障壁になりがちです。
| 血清K | 対応 |
|---|---|
| < 5.0 | 問題なし。MRA を開始・継続できる |
| 5.0 〜 5.5 | すぐに止めない。まず原因を探す(下記)。頻回にKを測りながら継続を試みる |
| 5.5 〜 6.0 | MRA を減量。K吸着薬の併用を検討。原因の是正 |
| > 6.0、または心電図変化 | 緊急対応。MRA・RAAS阻害薬を中止し、高K血症の治療へ |
入院してきた慢性心不全の患者。内服中の4本柱をどうするか――反射的な中止は避けてください。
| 薬剤 | 増悪時の扱い |
|---|---|
| β遮断薬 | 血圧・灌流が保たれていれば継続。低灌流があれば減量、ショックなら中止。 ※ 新規導入・増量は安定してから |
| ARNI/ACE-I/ARB | 血圧が保たれていれば継続。低血圧・急性腎障害・高K血症があれば減量・中止 |
| MRA | 高K血症・腎機能悪化があれば中止。それ以外は継続 |
| SGLT2阻害薬 | 基本は継続。脱水・絶食・シックデイでは休薬 |