フロセミドの初回量をどう決めるか/効いたかどうかを何で見るか/効かないときに何を足すか/そして「腎機能が悪化した」をどう読むか。
急性心不全で入院した患者の症状は、多くの場合数日で改善します。しかし症状が取れることと、うっ血が取れきることは違います。
退院時にうっ血が残っている(residual congestion)患者は、症状が軽快していても再入院率と死亡率が高いことが知られています。だからこそ、退院を判断する基準は、息切れが取れたかではなく、頸静脈・体重・浮腫が戻ったかであるべきです。
急性期は静注を選びます。腸管もうっ血しているため、経口では吸収が不安定だからです。初回量は普段の内服量を基準に決めます。
| 患者背景 | フロセミド静注の初回量(目安) |
|---|---|
| 利尿薬を使っていない | 20 〜 40 mg 静注 |
| すでに内服している | 普段の経口1日量の 1 〜 2.5 倍に相当する量を静注 例:フロセミド40mg/日を内服中 → 40〜100mg 相当を静注で |
| 腎機能低下・高度うっ血 | より高用量を要することが多い 尿細管に届く薬物量が減るため |
投与したら、必ず効果を判定して次の量を決めます。判定は早いほうがよく、投与から2〜6時間後には尿量で当たりがつきます。
十分量のループ利尿薬を使ってもうっ血が取れない状態を利尿薬抵抗性と呼びます。次の順で考えます。
| 薬剤 | 作用部位・特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| サイアザイド系 トリクロルメチアジドなど | 遠位尿細管。ループ利尿薬で増えた遠位への Na 再吸収をブロックして相乗効果 | 低K・低Na血症を起こしやすい。頻回の電解質チェックが必須 |
| トルバプタン バソプレシンV2受容体拮抗薬 | 水だけを排泄する(水利尿)。低Na血症を伴ううっ血や、電解質を崩したくない場面で有用 | 必ず入院下で開始。急激な血清Na上昇に注意。口渇を感じ、飲水できる状態であることが前提 |
| MRA スピロノラクトンなど | 集合管。利尿効果に加えK保持的に働く | 高K血症。詳細は第5章 |
| アセタゾラミド | 近位尿細管。ループ利尿薬への上乗せ効果が報告されている | 代謝性アシドーシス。血液ガス判読ノート |
利尿を進めると Cre が上がる。研修医が判断に迷う場面です。結論から言えば、Cre の数字だけでは決められません。うっ血が取れているかどうかとセットで読みます。