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リファレンス

心不全 薬剤リファレンス

4本柱・利尿薬・その他の治療を、開始量/目標量/開始条件/注意点で引けるようにまとめました。タップで開きます。

用量は成人・腎機能が保たれている場合の一般的な目安です。実際の投与は各施設のプロトコル、患者の病態、および最新の添付文書に従ってください。腎機能低下時の調整は各項目の注意欄を参照してください。
ARNI・RAAS β遮断薬 MRA SGLT2i 利尿薬 その他 避ける薬
① ARNI / ACE阻害薬 ・ ARB
RAAS を抑える。ARNI はさらにナトリウム利尿ペプチドの分解を止める
サクビトリル/バルサルタン(エンレスト)
開始量50mg 1日2回
増量2〜4週ごとに段階的に 50 → 100 → 200mg(1日2回)
目標量200mg 1日2回
ACE阻害薬からの切替は36時間空ける。血管浮腫のリスクが高まるため、この間隔は必須。
ARB からの切替に休薬期間は不要。
内服中は BNP が上昇する(ネプリライシン阻害のため)。経過は必ず NT-proBNP で追う。
低血圧・高K血症・腎機能悪化に注意。開始・増量後は1〜2週で血圧・K・腎機能を再検
妊婦には禁忌。血管浮腫の既往がある患者にも用いない。
ACE阻害薬・ARB(ARNI が使えない場合)
薬剤開始量目標量
エナラプリル2.5mg/日5〜10mg/日
カンデサルタン4mg/日8〜12mg/日
ACE阻害薬の空咳は数%〜十数%に生じる。出現したら ARB または ARNI へ変更する。
導入時の Cre 上昇は30%以内なら許容(糸球体内圧の低下による生理的変化)。
② β遮断薬
交感神経の過剰刺激を抑え、リモデリングを防ぐ
カルベジロール(アーチスト)
開始量1.25mg 1日2回(食後)
増量1週間以上の間隔で忍容性を見ながら
1.25 → 2.5 → 5 → 10mg(いずれも1日2回)
維持量2.5 〜 10mg 1日2回
年齢・症状により、さらに低用量から開始してもよい。
ビソプロロール(メインテート)
開始量0.625mg 1日1回
増量1〜2週ごとに漸増
目標量5mg 1日1回
共通の注意
開始は「うっ血が取れた安定期」に。急性増悪期の新規導入・増量は(陰性変力作用で増悪させる)。
すでに内服中の患者が増悪しても、反射的に中止しない。血圧・灌流が保たれていれば継続、低灌流なら減量、ショックなら中止。
急な中止は頻脈・血圧上昇・虚血の誘発を招く。止めるなら漸減。
気管支喘息では慎重投与。COPD は多くの場合 β1選択性薬で使用可能。
腎機能による用量調整は基本的に不要。
③ MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)
アルドステロンによる心筋線維化を抑える。利尿効果もある
開始条件(共通)
血清 K < 5.0 mEq/L
eGFR > 30 mL/分/1.73m²
開始後1〜2週間で K と腎機能を再検。以後も定期的に。
スピロノラクトン(アルダクトンA)
開始量12.5 〜 25mg/日
目標量25 〜 50mg/日
女性化乳房・乳房痛が男性の数%に生じる。出現したらエプレレノンへ変更
エプレレノン(セララ)
開始量25mg 1日1回
目標量50mg 1日1回
eGFR 30〜5025mg 隔日で開始し、25mg/日を超えない
性ホルモン関連の副作用がスピロノラクトンより少ない。
微量アルブミン尿を伴う糖尿病、中等度以上の腎機能障害、高K血症では投与に制限がある。添付文書の禁忌を確認すること。
高K血症が出たら
K 5.0〜5.5:すぐ止めない。まず再検(溶血による偽性高K血症)+原因検索(併用薬・脱水・K製剤・低ナトリウム塩)。
K 5.5〜6.0:減量。K吸着薬の併用を検討し、可能なら継続する。
K > 6.0 または心電図変化:中止し、高K血症の治療へ。
④ SGLT2阻害薬
糖尿病の有無を問わず有効。漸増不要で最も導入しやすい
薬剤用量備考
ダパグリフロジン
フォシーガ
10mg 1日1回心不全・CKD にも適応
エンパグリフロジン
ジャディアンス
10mg 1日1回心不全に適応
注意点
漸増不要。最初から目標量なので、導入の手間が小さい。
糖尿病がなくても使う。「糖尿病の薬」ではない。
開始直後の eGFR 低下(initial dip)は可逆的。ここで中止しない。長期的には腎保護的に働く。
シックデイは休薬(発熱・下痢・嘔吐・食事摂取不良・手術前)。脱水とケトアシドーシスの予防。
正常血糖ケトアシドーシスがまれに起こる。血糖が正常でも、悪心・腹痛・倦怠感があればケトンを確認。
性器・尿路感染。とくに女性・高齢者。陰部の清潔について導入時に説明する。
利尿作用があるため、導入時にループ利尿薬の減量が必要になることがある
利尿薬(症状を取る薬)
予後は変えないが、うっ血による症状を最も確実に改善する
フロセミドの急性期静注
利尿薬 未使用20 〜 40mg 静注
すでに内服中普段の経口1日量の 1 〜 2.5 倍に相当する量
効果判定は投与2〜6時間の尿量。反応不良ならその日のうちに倍量へ。翌朝まで待たない。
急性期は静注を選ぶ(腸管うっ血で経口の吸収が不安定)。
持続静注と間欠静注に明確な優劣は示されていない。効果を見て調整することのほうが重要
低K・低Na血症、脱水、腎機能悪化に注意。Kは補正しながら進める
効かないときに追加する薬
薬剤特徴注意
サイアザイド系遠位尿細管をブロックし相乗効果低K・低Naを起こしやすい。頻回の電解質チェック
トルバプタン水だけを排泄。低Na血症を伴ううっ血に有用入院下で開始。急激なNa上昇に注意。口渇を感じ飲水できることが前提
アセタゾラミド近位尿細管。上乗せ効果の報告代謝性アシドーシス
Cre が上がったときの解釈
うっ血が改善しながらの上昇:許容してよい。利尿を続ける。
うっ血が取れないままの上昇:低灌流(Nohria C)を疑う。利尿を止め、灌流の立て直しへ。
腎うっ血そのものが腎機能を落とす。うっ血を取ることで腎機能が改善することがある。
その他の治療
4本柱で不十分なとき/特定の条件下で加わる選択肢
治療位置づけ
イバブラジン洞調律で、β遮断薬が最大耐用量でも心拍数が下がりきらないとき。心拍数のみを下げる
ベルイシグアト増悪を繰り返す HFrEF への追加選択肢
ジギタリス予後改善は示されていない。心房細動合併時の心拍数調整や症状緩和に限定的に
鉄補充鉄欠乏を伴う心不全で症状・運動耐容能・QOL の改善。Hb正常でも鉄欠乏はあるためフェリチン・TSATを測る
CRTQRS幅が広い(とくに左脚ブロック)低EF例
ICD致死性不整脈による突然死の予防
強心薬
ドブタミンなど
低灌流(Nohria C・CS3)に対して。長期使用は予後を悪化させうるため急性期の橋渡しとして
HFpEF では
明確に推奨できるのは SGLT2阻害薬
残りはうっ血の管理併存疾患の治療(高血圧・心房細動・肥満・糖尿病・CKD・睡眠時無呼吸)が本体。
利尿薬の窓が狭い。抜きすぎると充満圧が落ち、心拍出量が低下する。少量ずつ調整する。
心不全で避けたい薬
処方前・増悪時に必ず確認する
薬剤理由
NSAIDsナトリウム貯留・腎血流低下。増悪因子として最頻。市販薬・整形外科処方まで確認する
ジルチアゼム
ベラパミル
陰性変力作用。HFrEF では避けるCa拮抗薬を選ぶ前に必ず EF を確認
ピオグリタゾン体液貯留による増悪
クラスI抗不整脈薬陰性変力作用・催不整脈作用
シロスタゾール頻脈を誘発しうる
一部の漢方(甘草含有)偽アルドステロン症による低K血症・浮腫
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免責事項:本コンテンツは医療従事者の学習・参考を目的としたものであり、医療機器ではありません。記載の数値・基準・薬剤の用量はあくまで一般的な目安であり、実際の診療は各施設のプロトコルと患者の病態、および最新の添付文書に従ってください。診断・治療の最終判断は必ず担当医師が行ってください。