EF の数字ではなく
うっ血と灌流の2軸で患者を置くうっ血(wet)=溜まっているか / 灌流(cold)=末梢に届いているか
分類(第1章)
| LVEF分類 | LVEF | 治療 |
| HFrEF | ≦ 40% | 4本柱が主戦場 |
| HFmrEF | 41〜49% | HFrEF に準じる(SGLT2i は強く推奨、他は一段弱い) |
| HFpEF | ≧ 50% | SGLT2i + 併存疾患管理 |
| HFimpEF | もと ≦40% が 40%超へ改善+10ポイント以上向上 → 治療は継続する |
ステージ A〜D
後戻りしない
A=リスク(HT・DM・CKD・肥満)/B=前心不全(無症状)/C=症候性/D=治療抵抗性
NYHA I〜IV
行き来する
I=制限なし/II=通常労作で症状/III=軽労作で症状/IV=安静時にも症状
※「ステージC・NYHA I度」は矛盾しない。治療がうまくいっている状態。
診断(第2章)
| 身体所見 | 感度 | 特異度 | 使い方 |
| 頸静脈怒張 | 低〜中 | 高 | あれば強い |
| Ⅲ音 | 低 | 非常に高 | 聴けたらほぼ確定。聴こえなくても否定しない |
| 下腿浮腫 | 中 | 低 | 単独では弱い |
| 湿性ラ音 | 低 | 中 | なくても否定できない |
| BNP | NT-proBNP | 解釈 |
| ≦ 18.4 | ≦ 55 | 基準値。可能性は極めて低い |
| 18.4〜35 | 55〜125 | 治療を要する心不全の可能性は低い |
| 35〜100 | 125〜300 | 精査・専門医紹介を考慮 |
| 100〜200 | 300〜900 | 可能性が高い |
| ≧ 200 | ≧ 900 | 高リスク |
高く出る
腎機能低下・心房細動・高齢・貧血・敗血症・肺塞栓
ARNI使用中はBNP上昇 → NT-proBNPで見る
低く出る
肥満(最重要)・急激な発症・収縮性心膜炎
急性期の型分け(第3章)
dry
うっ血なし
wet
うっ血あり
warm
灌流○
cold
灌流✗
最大の失敗
C(cold&wet)を B と誤って利尿薬を打つ。浮腫を見たら必ず手を握る。
脈圧比 (SBP−DBP)/SBP < 25% なら低心拍出量を疑う。
| CS | 収縮期血圧 | 初期対応 |
| CS1 | > 140 | 血管拡張薬+NPPV。大量の利尿薬は誤り(volume shift) |
| CS2 | 100〜140 | 利尿薬が主役(volume overload) |
| CS3 | < 100 | 低灌流。強心薬を考慮し循環器へ |
| CS4 | — | 急性冠症候群 → 再灌流が最優先 |
| CS5 | — | 右心不全 → 前負荷を落としすぎない |
すぐ循環器を呼ぶ
SBP<90・低灌流/ST上昇/NPPVで改善しない呼吸不全/血行動態を崩す不整脈/重症弁膜症・機械的合併症
迷ったこと自体が呼ぶ理由。
利尿薬(第4章)
| 場面 | フロセミド静注の初回量 |
| 利尿薬 未使用 | 20 〜 40 mg |
| すでに内服中 | 経口1日量の 1 〜 2.5 倍 |
効果判定
投与2〜6時間の尿量。反応不良ならその日のうちに倍量。翌朝まで待たない。
体重は毎朝同条件。1日 0.5〜1.0kg 減が目安。
効かないとき
①量 ②経路(静注へ)③灌流(Nohria C なら利尿では解決しない)④NSAIDs ⑤塩分・水分
→ 作用部位の違う薬を追加
Cre が上がったら
うっ血が取れながらの上昇 → 許容(利尿を続けてよい)
うっ血が取れないままの上昇 → 危険信号(低灌流を疑う)
※ 腎うっ血自体が腎機能を落とす。利尿で腎機能が改善することもある。
4本柱(第5章・HFrEF はすべて Class I)
| 薬剤 | 開始量 | 目標量 |
エンレスト サクビトリル/バルサルタン | 50mg 1日2回 | 200mg 1日2回 2〜4週ごと増量 |
| カルベジロール | 1.25mg 1日2回 | 2.5〜10mg 1日2回 1週以上あけて漸増 |
| ビソプロロール | 0.625mg 1日1回 | 5mg 1日1回 |
| スピロノラクトン | 12.5〜25mg/日 | 25〜50mg/日 |
| エプレレノン | 25mg 1日1回 | 50mg 1日1回 |
ダパグリフロジン エンパグリフロジン | 10mg 1日1回 | 同じ 漸増不要 |
戦略
高用量の1剤より、低用量の4剤。まず揃えて、増量はあとから。
導入は制約の少ない順に:SGLT2i →(血圧に余裕があれば)β遮断薬・ARNI →(K・腎機能が許せば)MRA
β遮断薬は安定期に少量から。急性増悪期に新規導入・増量しない。
MRA開始は K<5.0 かつ eGFR>30。開始後1〜2週でK・腎機能を再検。
導入の落とし穴(第6章)
| 状況 | まず考えること |
| 血圧が低い | ①利尿薬過剰? ②不要な降圧薬が残っていない? ③無症状なら継続してよい ④中止でなく減量 |
| Cre が上がった | RAAS阻害薬導入時の 30%以内の上昇は許容。SGLT2i の初期eGFR低下で中止しない |
| K が高い | 5.0〜5.5 は即中止しない。まず再検(偽性)+原因検索。K吸着薬で薬を続ける選択肢 |
| 増悪した | 反射的に全部止めない。低血圧・低灌流・高K・腎障害の有無で決める |
よくある失敗
一度止めた薬が二度と再開されない。止めるときは再開の条件と時期をカルテに書く。
β遮断薬の急な中止は頻脈・虚血を招く。止めるなら漸減。
心不全で避けたい薬
| NSAIDs | Na貯留・腎血流低下。市販薬まで確認する |
| ジルチアゼム・ベラパミル | 陰性変力作用。HFrEF では避ける(Ca拮抗薬を選ぶ前に必ず EF を確認) |
| ピオグリタゾン | 体液貯留 |
| クラスI抗不整脈薬 | 催不整脈作用 |
退院・再入院予防(第8章)
| 退院の条件 | 内容 |
| 1 | うっ血が取れている(頸静脈・浮腫・ドライウェイト) |
| 2 | 経口に切り替えて 24〜48時間 安定 |
| 3 | 4本柱が始まっている(入院中に導入) |
| 4 | 増悪因子に手を打った(怠薬・塩分・Af・虚血・NSAIDs) |
| 5 | 患者が体重測定と連絡基準を言える |
| 6 | 退院後1〜2週間以内の外来予約(脆弱期) |
患者に伝える体重ルール
毎朝・排尿後・同じ服装で。「2〜3日で2kg増えたら連絡」
減り続けても連絡(脱水・悪液質)
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免責事項:本コンテンツは医療従事者の学習・参考を目的としたものであり、医療機器ではありません。記載の数値・基準・薬剤の用量はあくまで一般的な目安であり、実際の診療は各施設のプロトコルと患者の病態、および最新の添付文書に従ってください。診断・治療の最終判断は必ず担当医師が行ってください。