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人工呼吸器トラブル対応

当直で呼ばれる場面ごとの鑑別と初期対応。各タイトルをタップでセクションを開閉できます。

状態が急変したら、まずこの順で
患者を見る(モニターではなく)。胸郭の上がり・左右差・チアノーゼ・意識
FiO₂ を 1.0 に上げる
呼吸器から外し、バッグで用手換気する
バッグの手ごたえで切り分ける:軽く入る → 呼吸器・回路側の問題/重くて入らない → 患者側(気道閉塞・気胸)
吸引カテーテルを通す(チューブ閉塞・位置異常の確認を兼ねる)
聴診・SpO₂・血圧・EtCO₂ を確認し、必要なら胸部 X 線・エコー
迷ったら呼吸器から外してバッグ換気。これだけで「機械の問題か、患者の問題か」が数秒で分かります。原因を考え込む前に、まず換気を確保してください。
気道内圧上昇 SpO₂ 低下 血圧低下 非同調 換気量・リーク NPPV・NHF
① 気道内圧上昇アラーム
最も多いコール。まず吸気ポーズで Pplat を測って2つに分ける
D
Displacement
位置異常
O
Obstruction
閉塞
P
Pneumo
気胸
E
Equipment
機器
S
Stacking
auto-PEEP
Ppeak↑・Pplat 正常 = 気道抵抗の上昇
喀痰・粘液栓による閉塞 ― 最も多い。吸引カテーテルを通し、通らなければ閉塞を確定。加温加湿の設定も確認
気管チューブの屈曲・ねじれ ― 頸部の向き、体位変換直後に多い。回路の重みでチューブが引っぱられていないか
患者がチューブを噛んでいる ― 覚醒・不穏時。バイトブロック、鎮静の調整
気管支攣縮 ― 喘息・COPD、アナフィラキシー、β遮断薬。呼気延長・wheeze。気管支拡張薬
カフヘルニア・チューブ先端の気管壁への当たり ― チューブを数 mm 引く/カフ圧を確認
Ppeak↑・Pplat↑ = コンプライアンスの低下
緊張性気胸最優先で除外。片側の呼吸音減弱・頸静脈怒張・血圧低下・気管偏位。疑ったら X 線を待たずに脱気
片肺挿管 ― 体位変換後に多い。左呼吸音の減弱。チューブの深さを確認して引き戻す
肺水腫・心不全の増悪 ― ピンク色泡沫痰、両側ラ音、In/Out バランス
無気肺 ― 分泌物貯留による。吸引・体位ドレナージ・PEEP
ARDS の進行・肺炎の悪化 ― 経過とともに徐々に上昇。P/F 比の推移を確認
腹腔内圧の上昇 ― 腹部膨満・イレウス・大量腹水・腹腔内出血。胸壁が硬いだけで肺は悪くない場合がある
auto-PEEP ― 閉塞性疾患+高い呼吸回数。フロー波形で呼気が 0 に戻らない
初期対応
吸気ポーズで Pplat を測る(これで上の2群に分かれる)
胸郭の動きと左右差を見る・聴診する
吸引カテーテルを通す(閉塞と位置異常を同時に確認)
改善しなければバッグ換気に切り替え、胸部 X 線・肺エコー
② SpO₂ が下がった
「測定の問題」から除外していくのが早い
まず疑う:本当に下がっているか
プローブの外れ・体動 ― 波形が乱れていないか確認
末梢循環不全・低体温・昇圧薬 ― 拍動が拾えず低く出る。耳朶・前額部に変更
マニキュア・色素・メチレンブルーCO 中毒(逆に高く出る)
呼吸器・回路側
回路の外れ・リーク ― 分時換気量の低下、低圧アラームを併発
酸素供給の途絶 ― 配管・ボンベ残量。搬送時に多い
FiO₂・PEEP の設定変更直後 ― 直前に誰が何を変えたかを確認
患者側 ― 急性発症
気胸 ― 気道内圧上昇を伴うことが多い(①参照)
肺塞栓 ― EtCO₂ の急低下・頻脈・ショック。SpO₂ 低下に対し気道内圧は正常
誤嚥 ― 体位変換・経管栄養中。片側性の浸潤影
粘液栓による無気肺 ― 突然の片側呼吸音消失
チューブの位置異常・事故抜管 ― EtCO₂ 波形の消失は決定的
患者側 ― 緩徐に進行
肺炎・ARDS の増悪肺水腫 ― P/F 比の推移で追う
無気肺の進行 ― PEEP 不足・鎮静過多・体位
非同調による換気効率の低下(④参照)
初期対応
FiO₂ を上げて時間を稼ぐ(原因検索の間の安全確保)
聴診・胸郭の左右差・EtCO₂ 波形を確認
吸引 → 改善すれば分泌物が原因
胸部 X 線・肺エコー(気胸・無気肺・肺水腫の鑑別に有用)/血液ガスで P/F 比を再評価
③ 人工呼吸中の突然の血圧低下
まず「息を吐かせる」。次に緊張性気胸
呼吸器が原因のもの(これを最初に考える)
auto-PEEP ― 閉塞性疾患・高 RR。回路を外して 10〜20秒息を吐かせると血圧が戻るのが診断的。RR を下げ呼気時間を延ばす
緊張性気胸 ― 気道内圧上昇・片側呼吸音減弱・頸静脈怒張。疑ったら画像を待たず脱気
PEEP の上げすぎ・過大な換気量 ― 胸腔内圧上昇で静脈還流が減少。特に循環血液量が少ない患者で顕著
挿管直後の低血圧 ― 陽圧+鎮静薬+交感神経刺激の消失が重なる。輸液・昇圧薬の準備を挿管前に
呼吸器以外の原因
循環血液量減少 ― 出血・脱水・利尿薬過多
敗血症・アナフィラキシー ― 発熱・皮疹・薬剤投与のタイミング
心原性 ― 心筋虚血・不整脈・心タンポナーデ。心電図・心エコー
鎮静薬・鎮痛薬 ― プロポフォール・オピオイドの投与直後や増量後
初期対応
回路を外して息を吐かせる(auto-PEEP の除外・治療を兼ねる)
呼吸音の左右差を確認 → 緊張性気胸の除外
輸液負荷・昇圧薬、直前に投与・変更したものを確認
心エコー(下大静脈径・心収縮・心嚢液)で原因を絞る
④ 患者 – 呼吸器 の非同調
「ファイティング」の正体を分ける。安易に鎮静を足さない
主な非同調のパターン
ミストリガー ― 患者が吸っても呼吸器が送らない。原因はauto-PEEP(最多)・トリガー感度が鈍い・呼吸筋力の低下
オートトリガー ― 患者が吸っていないのに送られる。回路の水滴・心拍動・大きなリークが原因
ダブルトリガー(二段呼吸) ― 1回の吸気努力に2回送気される。設定の吸気時間や換気量が患者の需要に対して小さいときに起きる。TV が二重に入るため危険
フロー飢餓 ― 吸気流速が足りず、患者が「吸い足りない」。VCV の圧波形が凹む。流量を上げるか PCV に変更
サイクル非同調 ― 送気の終了が早すぎる/遅すぎる。COPD では吸気が長引きやすい(呼気トリガー感度の調整)
「ファイティング」を見たら考える順番
まず生命に関わる原因を除外 ― 低酸素・気胸・チューブ閉塞・auto-PEEP・出血
次に苦痛の原因 ― 疼痛・尿閉・体位の不快・せん妄・不安
そして設定を見直す ― 換気量・吸気流速・トリガー感度・吸気時間
最後に鎮静・鎮痛の調整 ― 原因を探さずに鎮静を深くするのは、問題を隠すだけで危険
初期対応
波形(圧・フロー)を実際に見て、どのパターンかを判定する
auto-PEEP があれば RR を下げ、外因性 PEEP を加えてトリガーを助ける
ダブルトリガーには換気量・吸気時間の見直し(鎮静だけで対処しない)
鎮痛を優先(analgesia-first)。痛みが取れると非同調が消えることは多い
⑤ 低換気量・リーク・無呼吸アラーム
「どこかで空気が逃げている」か「患者が呼吸していない」か
低換気量・低圧アラーム(リークを疑う)
回路の外れ・接続の緩み ― 最も多い。加温加湿器・フィルター・吸引ポートを順に確認
カフのリーク・カフ圧低下 ― 発声が聞こえる、吸気時に喉から音。カフ圧を 20〜30 cmH₂O に
チューブの位置が浅い(カフが声門上) ― 深さを確認。X 線で先端位置を確認
胸腔ドレーンからのエアリーク ― 気管支胸膜瘻。ドレーンの気泡を確認
PCV で換気量が落ちた ― リークではなくコンプライアンス低下の可能性(①参照)
無呼吸アラーム
鎮静薬・オピオイドの過量 ― 最も多い。投与量と投与時刻を確認
PSV / CPAP で自発呼吸が止まった ― バックアップ換気の設定を確認し、A/C に戻す
意識障害の進行・脳血管障害・代謝性脳症 ― 神経学的評価
低体温・重篤なアルカローシス ― 呼吸ドライブの低下
アラーム設定そのものの問題
アラーム閾値が患者の状態に合っていない(設定変更後に見直していない)
アラームを安易に消音・無効化しない。頻回に鳴るなら閾値ではなく患者の状態を疑う
⑥ NPPV・NHF のトラブル
多くは「装着」の問題。ただし挿管の遅れだけは避ける
NPPV のよくあるトラブル
大きなリーク ― マスクサイズが合っていない/ベルトの締めすぎ(かえって漏れる)/経鼻胃管の隙間。目に風が当たると必ず嫌がられる
患者が耐えられない ― 圧が急に高すぎる。低い圧から始めて数分かけて上げる。手でマスクを当てて慣らす
鼻根部の発赤・褥瘡 ― 長時間使用で高頻度。被覆材を早期から貼る、マスクの種類を交互に
胃膨満・嘔吐 ― IPAP 20〜25 cmH₂O 超で起きやすい。誤嚥のリスクが高く危険。圧を下げる/胃管の留置を検討
口腔・気道の乾燥 ― 加温加湿の設定を確認
同調不良 ― リークが原因のことが多い。リークを直すと改善する
NHF のよくあるトラブル
回路内の結露 ― 加温加湿の設定・室温。水が患者側に流れ込まないように
鼻腔の不快感・流量が強すぎる ― 流量を段階的に上げる
口を開けていて効果が出ない ― PEEP 効果は口を閉じて得られる。声かけ・チンストラップ
カニューレのサイズが合っていない ― 鼻孔の 50% 程度を占めるサイズが適切
撤退のタイミング
NPPV:1〜2時間後に pH と PaCO₂ が改善していなければ挿管。開始時に再評価の時刻を決めておく
NHF:ROX index((SpO₂/FiO₂)÷RR)を 2・6・12 時間で評価。<3.85 なら挿管リスクが高い
意識障害・循環不安定・気道保護不能が出たら、指標にかかわらず挿管
非侵襲的手段の最大の害は、それ自体ではなく「挿管の遅れ」。「もう少し様子を見る」を繰り返さない
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まとめ早見表
設定値・基準値を1ページに
第7章:設定パラメータと肺保護換気
Ppeak / Pplat・auto-PEEP の詳しい解説
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