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第6章 / 全8章
第 6 章 ・ 混合性
混合性・三重酸塩基異常
複数の原発性変化が同時に起きるとき、どうやって見抜くか。代償式とΔ比が頼りになります。
血液ガスで「混合性(mixed)」という言葉は、
2つ以上の独立した原発性酸塩基異常が同時に存在する
ことを指します。代償ではなく、別々の病態プロセスが重なっているため、代償式から外れたり、Δ比が異常値を示したりします。
§ 1
「混合性」を疑うサイン
以下のいずれかがあれば混合性を疑います。
代償式から外れている
:予測値と実測値がずれている
pH が正常なのに PaCO₂ と HCO₃⁻ が両方異常
:2つのプロセスが拮抗している
PaCO₂ と HCO₃⁻ が同方向に動いている
:例えば両方↑ならば呼吸性アシドーシス+代謝性アルカローシス
Δ比 が1〜2を外れている
:AG開大型に隠れた別の代謝性変化がある
PaCO₂ と HCO₃⁻ が同方向に動いている(両方↑または両方↓)場合は、代償だけでは説明できず、必ず混合性を考えます。代償では pH を戻す向きの変化しか起きないからです。
§ 2
よくある混合パターン
呼吸性アシドーシス + 代謝性アルカローシス
pH ≈ 正常
PaCO₂↑ かつ HCO₃⁻↑(両方↑)。COPD + 利尿薬使用(Cl⁻ 喪失→ HCO₃⁻↑)が典型。pH は一見正常でも両者の問題は残っている。
呼吸性アルカローシス + 代謝性アシドーシス
pH ≈ 正常〜低
PaCO₂↓ かつ HCO₃⁻↓(両方↓)。敗血症(呼吸性アルカローシス)+ 乳酸アシドーシス(代謝性アシドーシス)が典型。
代謝性アシドーシス + 代謝性アルカローシス
pH 様々
AG と HCO₃⁻ の変化が Δ比 > 2 で示される。DKA + 嘔吐、腎不全 + 嘔吐などが典型。
三重異常(AG開大型+AG非開大型+代謝性アルカローシス)
pH 様々
まれだが複雑な病態(敗血症+嘔吐+腎不全など)で起きる。5ステップを踏まないと見落とす。
§ 3
混合性の読み方フロー
混合性が疑われるときの実践的な手順です。
Step 1
:PaCO₂ と HCO₃⁻ が両方同じ方向に動いていないか確認
Step 2
:代償式で予測値と実測値を照合。外れていれば混合性
Step 3
(AG開大型の場合):Δ比 を計算。<1 または >2 なら隠れた代謝性異常あり
Step 4
:臨床像(病歴・投薬・バイタル)と照合して説明がつくか確認
混合性の判断チェック ───────────────────────── 1. PaCO₂ と HCO₃⁻ が同方向↑↑ または ↓↓ → 混合性確定 2. 代償式から実測値が外れる → 混合性を疑う 3. Δ比 < 1 → AG開大型 + AG非開大型の混合 Δ比 > 2 → AG開大型 + 代謝性アルカローシスの混合
§ 4
複雑症例で通す
68歳男性。COPD 既往あり。3日間の発熱・咳・喀痰増加。前医でフロセミド投与中。
pH 7.44 / PaCO₂ 56 / HCO₃⁻ 36 / Na 140 / Cl 88 / Lac 1.2
1
Step1:pH と方向を確認
pH = 7.44 → 正常域の上端(わずかにアルカリ寄り)。PaCO₂ = 56↑、HCO₃⁻ = 36↑。
両方↑ = 代償だけでは説明できない。混合性が確定。
2
Step2:それぞれの原発性変化を確認
PaCO₂ 56↑ →
呼吸性アシドーシス
(COPD急性増悪)。
HCO₃⁻ 36↑ → COPD慢性代償で期待される値は?
慢性代償:ΔHCO₃⁻ = ΔPaCO₂ × 0.35 = (56-40) × 0.35 ≈ 5.6 → 予測 HCO₃⁻ ≈ 29.6 ± 3。
実測 36 は予測上限 32.6 を大きく超える →
代謝性アルカローシスも合併
。
3
Step3:AG
AG = 140 − (88 + 36) =
16
(やや上昇)。乳酸 1.2(正常)。軽度 AG 上昇は感染に伴う代謝変化かもしれないが、Δ比 = (16-12)/(24-36) = 4/(-12) → 分母が負(HCO₃⁻ > 24)なので Δ比 は適用外。代謝性アルカローシスが共存しているため。
4
まとめ・臨床的意味
✅ 慢性呼吸性アシドーシス(COPD) + 代謝性アルカローシス(フロセミドによる Cl⁻ 喪失)の混合。
フロセミドで Cl⁻ が失われ HCO₃⁻ が上昇(代謝性アルカローシス)し、2つのプロセスが拮抗して pH が一見「正常」になっている。
この章の要点
PaCO₂ と HCO₃⁻ が両方同じ方向に変化 → 代償ではなく混合性。
代償式から外れている → 同方向の第2の原発性変化が隠れている。
Δ比 <1 → AG開大型+AG非開大型の混合。Δ比 >2 → AG開大型+代謝性アルカローシスの混合。
よくある組み合わせ:COPD+利尿薬、敗血症+乳酸、DKA+嘔吐。
pH が正常でも「2つが拮抗している」ことがある。省略せずに全ステップを踏む。
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免責事項:
本コンテンツは医療従事者の学習・参考を目的としたものであり、医療機器ではありません。診断・治療の最終判断は必ず担当医師が行ってください。
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