代謝性アシドーシスの「タイプ」を分け、Δ比で隠れた異常を探す。判読の精度を一段上げる章です。
血液中の陽イオン(カチオン)と陰イオン(アニオン)は電気的に中性を保っています。測定される主要イオンを使って書くと:
「未測定陰イオン」とは、アルブミン・リン酸・有機酸など、通常検査に含まれていない陰イオンの総称です。正常では主にアルブミンが AG の大部分を占めます。
代謝性アシドーシスでは HCO₃⁻ が低下しますが、AG が上昇するかどうかで原因が異なります。
AG 開大型では「酸が蓄積して HCO₃⁻ が消費された」ため、AG↑と HCO₃⁻↓がセットで起きます。AG 非開大型では「外に HCO₃⁻ が出ていった」ので、電気的中性を保つために Cl⁻ が増えます(高クロール性アシドーシス)。
AG の主成分はアルブミンです。低アルブミン血症(入院患者に多い)では、AG の正常値自体が下がります。補正せずに使うと「AG 正常」と見誤ることがあります。
例:アルブミン 2 g/dL の患者で AG = 14 の場合
補正 AG = 14 + 2.5 × (4 − 2) = 14 + 5 = 19(実は AG 開大型)
AG 開大型の代謝性アシドーシスを確認したら、必ず Δ比 を計算します。AG が上がった分だけ HCO₃⁻ が期待通り下がっているかを見て、AG 上昇の陰に潜む「もう一つの代謝性異常」を探すのが Δ比です。
| Δ比 | 解釈 |
|---|---|
| < 1 | AG 上昇の割に HCO₃⁻ が下がりすぎ → AG 開大型 + AG非開大型の混合アシドーシス |
| 1 〜 2 | AG の上昇と HCO₃⁻ の低下が対応 → 純粋な AG 開大型代謝性アシドーシス |
| > 2 | AG 上昇の割に HCO₃⁻ があまり下がっていない → AG 開大型 + 代謝性アルカローシスの混合 |